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笑い話 落語 ② 風呂屋の決闘

  • white-eagle1958
  • 2021年1月1日
  • 読了時間: 5分

2021.1.1


皆様、明けましておめでとうございます。昨年はとんでもない年になってしまいましたが、今年こそは良い年となりますよう願うばかりです。ですが、笑う門には福来る。

新春初笑いをお届けしようと思う次第でございます。どんな話になりますか、請うご期待。では、始まり、始まり。


とある町に松の湯という銭湯が在りまして、歴史が古そうな趣、脱衣場には様々な絵画が飾られ、風呂場には昔懐かしい定番の富士山が描かれておりました。

今、その男湯の脱衣場には多くの人が詰めかけ、決闘の開始を今か、今かと待っています。湯舟には頭にタオルを乗せた2人の男性が、脱衣場のギャラリーを見つめて湯に浸かっていました。

「どうも大変な人出ですねぇ、朝立さん」

「相撲で言えば、横綱同士の対決ですからねぇ、いやがうえにも盛り上がりますよ、横棒さん」

「この試合だけに・・・ おっと、選手の入場です」

朝立ちさんの実況と共に、二人の男性が腰にタオルを巻いて登場しました。

「向かって右が、大木金太郎、左が麻羅竿之介。両者気合充分、既にタオルがテント状態であります」

2人の男性が洗い場の左右に分かれ、それぞれ、首を動かしたり、腕を回すなどの準備運動を始めました。やがて、一斉にタオルを投げ捨てるとギャラリーがどよめきました。

「おお~っ!」

「これは凄い!」

「いやあ、これは驚きました。2人ともこれ程とは・・・さすがに横綱級。どうですか?朝立さん」

「金太郎の色といい、反りといい、見事ですなあ。欲を言えばもう少し長さがあると完璧でしょうなあ」

「対する竿之介の方は如何でしょう?」

「キン肉もりもりで、あれは相当鍛えてますな。見て下さい、あのちからコブ」

2人が洗い場の中央に歩み寄り、互いに顔を突き合わせて睨み合いました。

「いよいよ試合開始です。今のところ両者まったく互角、これは楽しみになってきました」

やがて2人は離れ左右に分かれた後、金太郎がおもむろに座椅子を掴んでその穴に一物を突っ込み、廻し始めました。

「金太郎が座椅子をバトンのごとく廻しております。いやあ、この回転は速い、プロペラを見るようであります」

「金太郎選手、相当誇示していますな。それともこれは挑発でしょうかねえ」

それを見ていた竿之介が、手元の洗い桶を持つとこれまた一物を軸に回転させました。

「おお~っと、竿之介選手が対抗心むき出し。洗い桶をフラフープのごとく廻しております」

「往年の師匠の技をみるようですなあ」

金太郎はドヤ顔の竿之介を横目で睨むと座椅子を3つ掴みました。

「おや、金太郎選手何をする気なんでしょう?座椅子を3つ掴みましたよ」

「重量挙げでもする気なんじゃないですかね。全部穴に通しましたねえ」

「挙がるのでしょうか?あれは大変ですよ。朝立さん」

「折れなきゃいいんですがねえ・・・」

「金太郎選手、静かに呼吸を整えております・・・ 気合充分。さあ、一挙に行くか。身体を反らしております。顔が段々赤くなってきました。挙がるか、挙がるか?」

ギャラリーが息を飲んで見守っている中、金太郎が気合と共に座椅子を挙げると、拍手と歓声が沸きました。

「挙がりましたねえ・・・これは見事!」

「今度は竿之介選手の挑戦です。4つ掴みましたよ」

「4つですか、無茶しなければいいんですがねえ・・・」

「しかし、これはさすがにキツイか? 中々挙がりません、1、2センチ浮いたか?

竿之介選手、身体を振るわせて集中しております。あ~っと、落とした、落としてしまいましたあ~! これは残念~」

「いい所まで、いったんですけどねえ・・・やはり、無理でしたねえ」

「竿之介選手、気落ちしたんでしょうか、心なしか竿の方も落ちてきました。今度は金太郎選手がドヤ顔!あっと、竿之介選手ここでマムシドリンクを要求。今、番台さんから手渡されました。金太郎選手にも渡ったようですね」

「番台さんの気配りでしょうねえ・・・」

「一旦休憩に入りますが、試合はこれから本番、実に楽しみな事になってきました。朝立ちさん、これからの展開をどうご覧になりますか?」

「これは明らかに金太郎選手が優勢でしょうねえ。しかし竿之介選手がどう巻き返しを図るか?それが見物ですなあ」

「それに対し金太郎選手がどう出るか? しかし今回、どういった経緯でこの様な試技と相成ったんでしょう?」

「お二人ともこの松の湯の常連さんでしてね。来ている内に互いに意識しだしたのでしょうねえ。何しろ物自慢のお二人ですからねぇ」

「なるほど・・・ さあ、始まるようですよ。両者互いに一礼、近づいて互いに一物を打ち合って離れました。勝負はへたった方が負けです。持久力と根気の勝負となります。

両者とも腰をゆっくりと回しながら、互いに相手の出方を伺っています。金太郎選手が大きく足を踏み入れ、腰を突き出しましたがかわされました。だが、連続攻撃、コーナーに追い詰めました。竿之介選手ピンチ!金太郎選手余裕の表情、その顔には笑みさえ浮かんでおります。さあ、どうするかジリジリと間合いを詰めていきます。その間、1メートルもありません。70センチ、60センチ、動いた!金太郎選手が獣のように竿之介選手に襲い掛かったあ!同時に竿之介選手も、あ~っ!すれ違いざま何があったんでしょう?

金太郎選手がうさぎの様に飛び跳ねております」

「カウンター攻撃でしょうねえ。すれ違いざま竿之介選手がカウンターを金太郎選手の急所に見舞ったと思われますねえ」

「あれは痛い。堪りませんね」

「堪らないでしょうなあ。私にも覚えがあります」

「立場逆転、今度は竿之介選手が飛び跳ねている金太郎選手に近づいていきます。飛び跳ねて、身体を回転させている金太郎選手、狙いが定まりません。どうするか?

あ~っ!これは何としたことでしょう。竿之介選手が金太郎選手のお尻に突っ込んでしまいましたあ!抜けない、抜けない~っ!身体がエビぞり~っ!金太郎選手悶絶~っ! ギャラリーが沸きに沸いております・・・あれはどうしたんでしょう、狙ったんですかね?朝立さん」

「ん~、普通は狙って入るものではないんですがねえ。しかし、竿之介選手の事ですから狙ったのかもしれませんなあ・・・」

「あ~っ!と金太郎選手が戦意を喪失した模様です。ここで試合終了、勝者は竿之介選手となりました」

「一目瞭然ですなあ」

「試合を振り返って如何でしょうか?どこが勝負の分け目でしたか?」

「そりゃあ、あのカウンターでしょうねえ。あれがすべてではないですかねえ」

「勝者、竿之介選手で沸きに沸いた松の湯から、実況はわたくし横棒、解説は朝立、2名でお送りしました。それでは皆様、ご機嫌よろしくお願いいたします」


お後がよろしいようで・・・ かしこ











 
 
 

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