笑い話 落語 ③ 五劫の擦り切れ
- white-eagle1958
- 2021年1月3日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年3月17日
2021.01.03
落語の話の中に、寿限無と言う話がありますな。可愛い我が子に目出度い名前を片端から付けてたら、やたらと長い名前になってしまったと言うお話ですな。この目出度い名前の中に、五劫の擦り切れと言うのが在ります。
今回のお話しは、この五劫の擦り切れのお話であります。
例によって長屋の八つぁん、熊さんが、大家さんの話を聞き岩山の天辺に登った所から話は始まります。
「よう、八つぁん、まだかなあ。おいらもう待ちくたびれちまったよ」
「そう焦るなって、熊さん。なんせ1000年に一度の天女のお出ましだ。天女も色々仕度があるんだろうさ」
「仕度ってどんな?」
「そりゃあ、おめえ、天女だからよ・・・」
「八つぁんも知らないんじゃねえの?」
「知ってるよ!ほら、あの、おしろいぬったっくっているとか、どの服着ていこうとか」
「天女も大変だねえ・・・」
「天女様も女な訳だし・・・」
「わかる、内のおっかあも出かける時はやたらと時間かかるんだよな。時間かけたって大して変わんないのによ」
「おめえんとこの、へちゃむくれと一緒にするなよ。仮にも天女だぞ」
「お前んとこだってお多福が踏んづけられたようなもんじゃねえか」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「やめるか・・・・・・」
「そうしよう。でもよ、こうなると益々天女様が気になるよなあ・・・」
「何が気になるって?八つぁん?」
「いやさ、どんなお姿をしてるのかって気になるじゃねえか」
「そうさなあ、大原麗子さんがおいらは好みでさ、ほら、あっただろ?細く愛して、永ーく愛してってやつ、あの酒飲みまくった」
「飲みすぎて、翌朝ケンタッキーおじさんと一緒に寝てたってやつだろ?一体何処から持ってきたんだ?」
「それが、覚えてねえんだ・・・」
「熊さんはそれだから・・・」
「八つぁんはどうなんだよ?」
「あっしは八千草薫さんがいいな。色っぽくてよ。あの白い手でどうぞなーんて言われた日にゃあ、もう天にも昇る心地がすらあ」
「そのまま、登っちまったら良かったのに」
「てめえ何抜かす!」
「悪かったよ、そう怒るなって。でもよ、八つぁん、大家さんの話では降りてきてどうするんだっけ?」
「何だよ、もう忘れたのか?そんな事だから、てめえのおっかあの名前も忘れちまうんだ。挙句の果てには別の名前呼ぶから」
「あんときゃあ、飲み過ぎてひでえ目にあった。あの後、おっかあが一週間も口をきいてくれなくてよ」
「全部てめえが悪い!」
「分かった、それはいいからよ。どうするんだっけ?」
「いいか、よく聞けよ。天女が1000年に一度降りてきて、天の羽衣で岩山をこうサーッと一掃きしてまた天に帰っていく。これを岩山が擦り切れるまで続けるのが一劫って言うらしい」
「それじゃ、五劫の擦り切れってのは?」
「それを五回繰り返すって事だろうな。とんでもなく永い時間だな」
「その頃俺たちは化石か?」
「化石も残ってねえよ、たぶん」
「そいつは悲しいや・・・」
「そんな先の事を心配しててもしょうがないよ、熊さん。そんな事よりどうやら天女のお出ましの様だぜ」
「何処だよ、八つぁん」
「あそこだ、小さく見えらあ」
「ほんとだ、どんどん近づいて来る。楽しみだなあ。あっ、飛行機が飛んでらあ。
あの飛行機と同じ大きさだ」
「・・・あの飛行機、天女より近いよな・・・」
「そうだなあ、天女の方がかなり遠いんじゃねえか?八つぁん」
「これから、どうするんだっけ?」
「何言ってんだ、さっき自分で言ってたじゃないか。天の羽衣でサーッと一掃きって」
「天女が大きくねえか?熊さん」
「えっ、そう言えば、さっきの飛行機を超えてんな。いつの間にか暗くなってんぞ」
「陰に入ったんだ。おいおいこんなの聞いてねえぞ」
「どんどんでかくなってる。目の前が天女だらけだ。こんなに天女がでかいとは」
「これから岩山を一掃きするんだったよな?熊さん」
「あの羽衣で一掃きされたら、俺たち堪ったもんじゃねえぞ、おい」
「俺たち何処に居るんだっけ?」
「岩山の天辺・・・」
「ヤバくねえか?」
「ヤバいよなあ・・・」
「とにかく、逃げろー!」
八つぁんと熊さんが岩山を転げ落ちる様にして逃げた後、大風が巻き起こり巨大な羽衣が
大音響と共に岩山を削り取って行ったのでした。めでたしめでたし
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