子供達へのお話 物覚えの悪いサンタさん ⑥
- white-eagle1958
- 6 日前
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更新日:5 日前
2025.11.01
お爺さんの一行が、底が見える程透き通った湖の畔に着いたのは、もう日暮れ間近の頃でした。
周りは黄色一色、冬の訪れが近い事を感じさせます。
お爺さんは赤々と火を焚き、揺らめく炎の向こうには、お腹一杯になったノースとサーミが仲良く蹲る様にして寝ていました。
空には満天の星。時折流れ星が横切ります。
お爺さんがうつらうつらしていると、不意に声が掛けられました。
「お前さん方、こんな所で何をしているんだい?」
ハッとして声のする方を見てみると、そこには大柄なシマフクロウがこちらを見ていました。
「あるじ、シマフクロウだ。何羽か隠れている・・・」
ノースがすぐに立ち上がり、警戒態勢を取りました。サーミも後に続きます。
「私達は・・・え~と、何処だっけ?・・・」
「んもう、しっかりしてよ、あるじ」
「森と湖の国へ行く途中だ。ここは、あんた達の縄張りなのか?」
ノースが答えました。
「森と湖の国じゃと?・・・」声と共に隠れていたシマフクロウ達が続々と現れ、次々と枝に留まりました。
「危ないぞ」
「危ない、危ない」
「悪い事は言わん。引き返した方がいいぞ」
シマフクロウ達は口々に騒ぎます。
「カモ達にも同じ事を言われたんだが・・・そんなに危ないのか?」
お爺さんは戸惑いを隠せませんでした。
「危ないも何も人間達が、恐ろしい事に火を噴く筒でもって暴れまくっているのでな。しかも7日も続けている。おちおち眠れもしないのでな。こうして逃げて来たんじゃよ」
「そればかりじゃなく、けたたましく音を立てる大きな金属の虫が、火の玉を吐き出んだ。堪ったものじゃない」
「他にも大きな金属の鳥が飛んできて、これまた金属の魚を落っことすんだ。それが大きな音を立てて破裂するんだ。もうあんな所に居られないよ」
シマフクロウ達は怯えている様でした。
「あるじ・・・」
サーミがお爺さんを不安げに見つめると
「軍事演習か?・・・どうやら状況が切迫しているみたいだな・・・」
「どうする?あるじ・・・」
「どうするって・・・行かないわけにもいくまいよ。こうなったら先を急ごう。日の出と共に出発だ」
「了解、あるじ」
「あんた達はどうするの?」
「我らは夜行性だ。このまま行くよ。お前さん方とは方向が逆だがな・・・さあ皆、行くぞ、夜明け前までに行けるとこまで行く」
そう言ってシマフクロウ達は飛び去って行きました。
お爺さん達は夜明けと共に旅立ちましたが、その途中で沢山の動物たちが移動していくのが見えました。オオカミや赤キツネ、クマ達が慌てているのが判ります。
前方の白い雪に覆われた山々の麓には、多くの戦車やヘリコプター、戦闘機が並んでいました
「ノース、サーミ。あそこは避けよう。遠回りをしてくれ。あの山を越えれば目的地だ」
「了解、あるじ」
ノースとサーミが大きく足を伸ばし始めると、お爺さんのソリが大きく傾きながらその麓から離れて行きました。
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