子供達へのお話 物覚えの悪いサンタさん ⑪
- white-eagle1958
- 3 日前
- 読了時間: 3分
2025.11.22
「あるじ、もうすぐ我が家だ」
ノースがそう言ったのは、もう日暮れ間近の頃でした。夕日が遠くに見える山々を茜色に染めています。
「そうだな、皆どうしているだろう・・・」
「私、お腹空いちゃった・・・」
「我が家で一杯食事をしよう。今夜はごちそうだ」
「ふふふ、楽しみね」
「帰ろう、我が家へ」
サンタさんが、白いひげと赤いコートを靡かせながら我が家へと向かうと、ソリが赤い夕日に吸い込まれて行きました。
その頃、おばさんは荷車を引いて色とりどりの紅葉の森を歩いていました。トナカイの小屋はもう目の前です。するとその中からまだ幼いヤンマーとカイヌーが飛び出してきました。
「ご飯だ、ご飯」
「私、お腹ペコペコ」
2頭とも待ちかねたようにピョンピョン跳ねました。
「ダメよ、食事は小屋に着いてから。皆と一緒にね」
おばさんは2頭を引き連れて小屋に向かうのでした。
すると気配を感じたのか、トナカイ達が次々と顔を出したのです。
「バルト、サイマ、オラル、ロッカ、エンネ、皆居るわね・・・あら、ピエリが居ないわ。
ピエリは何処?」
「ピエリなら森からまだ帰って居ないよ。あいつは夢中になると時間忘れるからなあ・・・
何処へ行ってんだか・・・」
「何言ってんの、すぐに探しに行きなさい。みんな揃うまでご飯はお預けよ」
「え~っ」
トナカイ達がうなだれました。
「仕方がない、みんな、ピエリを探しに行くぞ。ご飯抜きは勘弁だ」
年長のバルトが外へ出ようとしたその時、ピエリが飛び込んで来たのです。
「ピエリ、ピエリじゃないか、何処へ行ってたんだ?御蔭で飯抜きになる所だったんだぞ」
ピエリはキョトンとした顔で
「そうだったの?知らなかった・・・それよりみんなに知らせる事が在って」
「そうだったのじゃね~よ、とんだとばっちりだ。お前は飯抜きだ」
「そうだ、そうだ」
「仕方ないわよ」
トナカイ達が口々にののしります。
「え~っ、そんなあ・・・」
騒ぎを見かねたおばさんが口を挟みました。
「みんな、落ち着いて。でピエリ、何を知らせるつもりだったの?」
ピエリは我に返ったように言いました。
「そうだった、みんな、喜べ、あるじが返って来るよ」
皆一瞬静まり返りましたが、次の瞬間
「それを早く言え、ばかあ・・・」
言うや否や皆小屋を飛び出して行きました。
取り残されたピエリが
「だからそれを知らせようとしたのにい・・・」
ブツブツ言いながら後に続くのでした。
「あるじ、我が家だ。皆揃っている」
「おばさんが手を振ってる」
「お~、全員居るな。皆元気そうだな。ではノース、サーミ、着地だ」
「了解、あるじ」
ノースがそう言うと、ソリは色づいた落ち葉を巻き上げながら、滑る様に小屋の前に着地したのでした。
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