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子供達へのお話 物覚えの悪いサンタさん ⑫

  • white-eagle1958
  • 2 日前
  • 読了時間: 2分

更新日:1 日前

2025.11.23


皆との食事が終わった後、サンタさんは着替えをし、元のお爺さんに戻りました。

そしてカバンをおばさんに手渡しながら、こう言いました。

「ありがとう。御蔭で助かった」

おばさんは微笑みながら

「役に立った?」

「大いに・・・でこれはお礼と言っては何だが・・・」

そう言って3本のバラの花束を差し出したのです。

おばさんは驚いた様に花束を受け取りましたが、リボンの結び目を一目見るなり

「これあなたが結んだの?」

「どうして判る?」

おばさんは微笑むだけでした。

その後お爺さんが窓際に座り、冴えわたる月を眺めたまま、何やら物思いにふけっていると

おばさんが隣に腰を下ろし

「何考えてるの?何かあった?」

おばさんがお爺さんの顔を覗き込みました。

「いや、懐かしい人に遭ったんだよ。絵だけどね・・・変わらず綺麗だったなあ・・・」

「何?女の人?付き合ってたの?」

お爺さんはおばさんの追及にうろたえましたが

「付き合ってたと言う程じゃないが・・・」

「何処までいってたの?キスはした?」

おばさんの追及は続きます。

「キス?め、滅相も無い」

お爺さんは慌てたように手を横に振りました。

「手位は握ったんでしょ?」

「いや、何も出来なかったな・・・」

「・・・呆れた。何やってんだか、あなたは・・・」

「あの頃は、私も若くてね・・・手も足も出なかった・・・」

「その人には会えたの?」

「いや、もう亡くなってた。今では懐かしい思い出だ・・・」

「そう・・・昔と言えば、私の事覚えてる?」

「君の事?何だっけ?・・・」

「馬鹿・・・初めて出会った時の事よ。ニコラス・・・」

「久しぶりに聞いたな、その名は・・・何時の事だっけ?」

「ほら、私の家が貧しくて私が身売りされそうになってた時の事よ」

お爺さんは上を向いて思い出そうとして居ましたが、急におばさんの顔を見つめ

「ああ、あの時の事か。確か夜中に君の家へ行き、金貨を放り投げたんだっけ」

「そう。それが丁度私が暖炉に干していた靴下に入ったのよね。御蔭で身売りしないで済んだ・・・」

「もう随分昔だな・・・」

「あれから始まったのよね、あなたのこの仕事・・・」

「君との関係もな・・・」

それきり2人は黙り込み、煌々と光る月を眺めていました。




 
 
 

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