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子供達へのお話 物覚えの悪いサンタさん ⑩

  • white-eagle1958
  • 2025年11月17日
  • 読了時間: 7分

更新日:2025年12月5日

2025.11.14


サンタさんはボーイさんと長い廊下を歩いていました。そこには、森と湖や白く光る山々や、新緑の木々などの絵画が飾ってあります。

サンタさんはその絵を眺めながら、通り過ぎて行きましたが、やがて一枚の絵の前で足を止めました。それは貴婦人の肖像画でした。

「サンタさん、何やってるんだ?私は忙しいんだけどね」

ボーイさんが急かす様に言いました。

「この女性は?・・・」

サンタさんは懐かしそうに絵を眺めていました。

「それかい?この方は先代の奥さんだよ。もう二人とも亡くなっているけどね・・・」

「そうか・・・もう亡くなっているのか・・・」

「知り合いかい?」

「いや、何でもない・・・」

すると後ろから急に声が掛かりました。

「おい、何やってんだ。早くいけ。お客さんが待っているんだぞ」

次のボーイさんが追い付いてしまったのです。

「はいただいま。おい、みろ、叱られたじゃないか。いくぞ」

「すまんすまん」

ボーイさんとサンタさんは、足早に歩き始めました。

少し行くと目の前に、バスケットコートは有ろうかと言う大広間に出たのです。

床は大理石が敷き詰められ、幾つものテーブルが並び、天井には大きなシャンデリアが吊るされ、煌々と輝いていました。サンタさんがそこに見た物は、シンドバッドやランプの大魔神、海賊たち、吸血鬼、魔法使いのおばあさん、カボチャのお化け、死神、骸骨、王子姿の若者などなど様々な仮装を凝らした大勢の人々でした。

「ボーイさん、有難う。お礼と言っちゃなんだが、此れを・・・」

サンタさんはまたバラをボーイさんに渡したのです。

「あんた、本当にサンタクロースなんだな・・・有難う」

オードブルを置いてきたボーイさんが、すれ違いざまバラを受け取り、立ち去ろうとした時、サンタさんが言いました。

「ボーイさん」

「何だよ、まだ何か?」

「ハッピークリスマス」

ボーイさんは笑顔に成って去って行きました。


大広間では、テーブルごとにワイングラスや料理皿を手にした人々の会話が始まって居ました。その一角で

「で、どうなんだ?あの国との交渉は・・・上手く行ってるのか?」

カボチャのお化けが言いました。

「あの国?あの国って言うと・・・」

死神が首を傾げました。

「あの国だよ。何かって言うと直ぐに火の玉降らしてやるって言う・・・」

「ああ、あの野蛮国か、脅しと嘘つきの国・・・あんまり良くないな・・・上手く行ったかと思うとひっくり返ったりして・・・正直あの国が何考えているのか、サッパリ判らない・・・」

死神が答えました。

「ホント、野蛮人の集まりよね。あの国は。国民も礼儀知らずだし、外交マナーも知らないみたいよ。こないだも呼び出しあったんだけど、その時連中、何言ったと思う?」

魔法使いのおばあさんが憤慨しました。

「お前の家族がどうなっても良いのか?・・・だろ?奴らの口癖だ。まったく脅せば総て済むと考えてるんだろうさ、あの国の連中は・・・」

カボチャのお化けが、嫌いな物を流し込む様に、ワイングラスを開けました。

「今じゃ、これ見よがしに軍事演習をやってるらしいわよ。恐ろしいわね・・・」

魔法使いのおばあさんが口を挟みました。

「何でも大掛かりらしいと聞いて居る。戦車とか、戦闘機とか・・・」

死神が鎌を立てました。

「いつもの脅しよ。毎回毎回そうなんだから嫌になる・・・」

魔法使いのおばあさんはワインを思いっきり煽りました。

「しかし我が国もこれ以上の要求には応えられない。何処かで爆発するぞ・・・しかし

これ美味いな」

カボチャのお化けがパンプキンパイを頬張りながら言いました。

「そうなったらどうなるのかしらね?」

「あまり考えたくないな・・・」

死神がポツリと言いました。

「連中、きっと言うぞ、決まり文句の」

「火の玉降らしてやる!」

3人が声を揃えた時、何処に居たのか、虹色の羽を持ったティンカーベルが、テーブルの下から現れ、

「戦争するの?」

「えっ?」

三人は驚きの余り動きが止まりました。

「あなた誰?スオ社長のお嬢さん?」

魔法使いのおばあさんが目を丸くしました。

「そう、アーリャと言うの」

ティンカーベルの澄んだ瞳が三人を見つめていました。

「あなた、此処で何しているの?」

「あのね、ピーターパンのお兄さんとかくれんぼしていたんだけど・・・

見つけに来なくって・・・」

ミーシャがそう言った時、後ろで男の人の声がしました。

「君がミーシャか」

ミーシャが振り返った時、その眼に飛び込んで来たのは、ピーターパンならぬ赤い服を着たサンタクロースでした。そのサンタクロースはアーリャに近づくと前かがみになって

「ハッピークリスマス、アーリャ。君を探していたんだ」

そう言い、袋から1本の赤いバラを取り出し、アーリャの前に差し出しました。

「ありがとう・・・サンタさん」

アーリャは戸惑いながらバラを受け取りました。

「皆さんにも、ハッピークリスマス」

サンタさんはそう言って、死神、カボチャのお化け、魔法使いのおばあさんにも赤いバラを配るのでした。

「これはどうも・・・」

「済まないな・・・」

「男の人から花なんて何年ぶりかしらね・・・あなたね、さっきからバラを配っていたのは」

魔法使いのおばあさんは嬉しそう。

アーリャはサンタさんの袖を引っ張って

「私を探してたって、何?」

サンタさんは身を屈めてアーリャの肩に手を置きました。

「君に聞きたい事が在ってね。何処か話せる場所ないかな?」

「聞きたい事?じゃ私の部屋にする?」

「それが良い」

サンタさんとアーリャは連れ立って大広間の中を歩き、2階に通じる階段を上って行きました。階段を一つ上る度に、ティンカーベルの虹色の羽がゆらゆら揺れました。中央の奥に在るのがアーリャの部屋です。

アーリャがドアを開け

「さあ、どうぞ」

サンタさんの入室を促しました。

「広くくて立派だね~」

サンタさんは周りを見渡しながら、感嘆の声を挙げました。

窓際の中央に大きなベッドがあり、足側には本棚と机が在りました。頭側にはピアノと3段の棚があり、そこには幾つかの人形や縫いぐるみが飾ってあります。

中でも特に目を引いたのは、ピアノの高さほどもある大きなクマのぬいぐるみでした。

アーリャはベッドに勢いよく腰かけるとそれが揺れ、サンタさんが隣に座ると、アーリャの身体が跳ねました。アーリャは少し驚いた様子でしたが

「なあに、聞きたい事って?」

「君のクリスマスのプレゼントの事だよ。欲しいものの名前が無かった。それで聞きに来たんだがね・・・」

サンタさんは落ち着かなくなりました

「欲しいものなんかないもの・・・パパが何でも買ってくれるし」

「う~ん、そうだろうねぇ・・・でもなんかないかな?ゲーム機とか」

「それなら新型持ってるもん」

そう言ってアーリャは、棚の扉を開け、発売されたばかりのゲーム機を見せました。

「それじゃ、車の玩具とかは?」

「本物あるし」

「ではお城のミニチュアなんかはどう?」

「パパがお庭に作ってくれた・・・ほら、あれ」

窓のカーテンを開くと、そこにはお城の尖塔が見えました。

「お城まであるのか・・・これは困ったなあ・・・」

サンタさんは浮かない顔をしました。するとアーリャが真顔でサンタさんを見つめ

「でもね、私サンタさんにお願いがあるの」

「何だい?」

「戦争を無くして欲しいの、お願い」

アーリャは両手を組み合わせて拝むのでした。

「はあ?戦争を無くせって?・・・それはムリだなあ・・・他にはないのかい?

お菓子とか」

「ホントはね、何でも話せるお友達が欲しいんだけど、下のお客さんが話してた。戦争になるかもしれないって。だから・・・」

「君はいい子だね・・・」

そのときピーターパンが飛び込んで来たのです。

「ティンカーベル、見つけたぞ。此処にいたのか、道理でちっとも見つからなかったわけだ・・・」

ピーターパンはすぐにサンタさんに気付いて訝し気にサンタさんを見つめ、問い詰める様な声を出しました。

「お前は一体誰だ?玄関は通らなかったよな?アーリャ、そこを離れろ。怪しげな奴、とっ捕まえてやる」

ピーターパンは、サンタさんとアーリャの間に割って入ろうとしました。

サンタさんは少しも慌てず袋からバラを取り出し、ピーターパンの鼻先に突き付けたのです。サンタさんは窓を開けると

「はい、貴方にこれを・・・今宵は此れにて失礼する。では二人とも良い夜を・・・

メリークリスマス!」

二人の目の前でサンタさんは深々と頭を下げると、窓の外になんとトナカイが現れたのです。

唖然とする2人を尻目に、サンタさんは窓からソリに乗り込みました。

「ノース、良かった、グッドタイミングだ」

「心配したぞ、あるじ」

「直ぐ出なきゃ」

言うや否やソリは夜空に舞い上がって行きました。

サンタさんは大声で

「わかったよ、アーリャ。君へのプレゼントは必ず用意するからな~っ!」

そう叫びました。

2人は見る見る小さくなっていくソリを、見送っていましたが

「ありがとう、サンタさん・・・」

「本物だったのかあ?・・・」

2人はそう呟くのでした。
















 
 
 

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