子供達へのお話 物覚えの悪いサンタさん ⑦
- white-eagle1958
- 5 日前
- 読了時間: 2分
2025.11.03
山を越えると景色は一変し、冬の色合いが濃くなっていました。木々は葉を落とし始めています。森の中に点在する湖が、静かに横たわって居ました。上空の空気は冷たさを増し、肌が痛いほどになりました。やがて太陽が西に傾きだした頃、森の向こうに家々が広がり始めると
「あるじ、街だ」
「此処なの?その場所」
「そうだ。この街のはず。え~と、メモは何処だ?」
お爺さんがコートを探り始めると、サーミは不安な顔をし、振り返りました。
お爺さんはとぼけ顔でしたが、メモを探り当てたのか
「大丈夫、心配ない」
そう言ってメモを取り出し、片目を瞑って見せました。
「場所判るの?」
「何言ってる。私はサンタクロースだぞ。子供の家ぐらい、すぐ判るさ。何年サンタクロースを遣ってると思っている」
そう言ってお爺さんは懐から地図を取り出しました。
「何処だ、あるじ」
「そう急くな。この地図からすると・・・あの家だ。えっ」
お爺さんが指さしながら驚きの声を挙げました。
「あの家?」
「あの家なの?何かの間違いじゃない?」
「・・・確かにあの家だ、間違いない」
「え~っ」
「うそお・・・」
戸惑いを隠せないまま、お爺さんが指さしたその先には、お城とも言える様な大邸宅があったのです。
山の中腹にあるその家は、野球場ほどもあろうかと言う敷地の中に存在を見せつける様に威容を誇って居ました。
「行くのか?あるじ」
「行くしかあるまい」
お爺さん一行は、その大邸宅目指してゆっくりと高度を下げて行きました。
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