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子供達へのお話 物覚えの悪いサンタさん ㉒

  • white-eagle1958
  • 2025年12月31日
  • 読了時間: 8分

更新日:1月7日

2025,12.31


夜明けを迎えた空は、明るさを増しもう直ぐ日の出です。東の空がオレンジ色に染まって居ました。空気はしんと冷え、風を加えて一層寒さが増しています。昨日の雪空と打って変わって雲一つなく、遠くの地平線まで見えていました。

サンタさんのソリは、国境の山まであと少しの距離でした。

「あの山を越えれば家に着くよ、アーリャ」

「サンタさん、大丈夫かな・・・」

「サンタさんならきっと大丈夫。何か考えがあるみたいだし・・・それより寒くない?アーリャ、随分と冷え込んできたけど」

「それほど寒くない。リューリクが袋で囲んでくれたから・・・」

水平線の彼方から太陽が頭を覗かせ光の矢を放つと、アーリャとリューリクの顔がオレンジ色になりました。

「見て、日の出・・・」

「夜明けだあ・・・・」

「あっちにビーナスベルトが・・・」

「えっ・・・ホントだ・・・」

アーリャが日の出と反対方向を指差すと、そこには上にピンクの帯と下にブルーの帯が地平線上に在りました。2人は神秘的な思いに浸って居ましたが、それも束の間、最後の列で走っていた勘の鋭いトナカイのエンネが警告を発しました。

「ノース、後ろから何か来る。凄いスピード・・・」

「わかった。皆注意だ」

トナカイ達に緊張が走りました。リューリクはすぐさま後ろの空へ振り返りました。

「何なの?一体?」

リューリクが見つめているとキラリと光る物が現れ、それは忽ち大きくなって行き、やがてかん高いエンジン音が、一行に聞こえ出しました。

「戦闘機だ・・・」

リューリクの声が緊張を帯びました。


「よ~し、追い付いつけるぞ。ドナル、偵察に入る。スピードを落とせ。通常通りだ」

レーダーサイトに映った光点を見て、ケル戦闘機隊長が指示を出しました。

「了解、スピードを落とします。通常通り」

「ドナル、並行飛行だ。目標を挟み込む」

「了解、並行飛行し目標を挟み込みます」

2機の戦闘機は、並んだまま遠くに見える小さな点を目指し、飛んで行きました。


「来る・・・2機だ」

「どうするの?」

アーリャの声が不安で震えました。

「僕たちじゃどうしようもないよ。トナカイ達に任せるしかない・・・」

リューリクも不安を隠せません。戦闘機はもう目の前に迫って居ました。そしてソリを挟むようにして飛び、あっという間に爆音と烈風を浴びせて飛び去りました。爆音にアーリャとリューリクは身を屈め耳を塞ぎましたが、トナカイ達は激しく動揺し、ソリは大きく揺れました。悲鳴を上げたアーリャをリューリクは庇いました。

「皆、落ち着け。大丈夫。今助けを呼んだ」

ノースが皆を落ち着かせるためにテレパシー通信を出した事を明かしました。

トナカイ達は仲間内でテレパシー通信を行います。その通信が近くに居るであろう仲間のトナカイ達に届く事を期待しての事でした。

戦闘機は国境近くの山にぎりぎりまで近づくと、いきなり急上昇を始め、そこで宙返りをし反転するとまたこちらへ向かって来ました。

「また来るよ」

「皆、降りるぞ」

悲鳴にも似たリューリクの声と落ち着いたノースの声が同時でした。

ソリは山の斜面に向かって、降りて行きました。


雲海の上を飛んでいたバルトロマイにその通信が入ったのは、朝日が雲海から突き抜けた頃でした。先頭を走っていたネシが突然言い出したのです。

「あるじ、ノースが助けを呼んでる。何か恐ろしいものに追われているみたい」

「ノースと言うと・・・ニコラスか。何処じゃ?」

「脅しと暴力の国、山があるみたい・・・」

「場所、特定できるか?」

「わかる。そこへ行く」

「頼む。全速力でな。それからノースに連絡も。此れから行くってな」

「わかった、あるじ・・・皆、ノースの所へ行くわよ」

そういうとバルトロマイのソリは、大きく左へ旋回していきました。


その通信は大海原を飛んでいたフィリポにも届きました。先頭のオリからニコラスの危機を感じ取ったフィリポは、直ちに救出に向かうべく、ソリを右旋回させました。

「イナリ、ノースへ連絡。此れから直ちに行くと」

「了解、あるじ」

ソリはそのまま真っすぐに飛んで行きました。


「どうやら下に降りるつもりだな。そうはさせるか。ドナル、貴様は上を取れ。俺は下を取る」

「了解、上を取ります」

2機の戦闘機はほぼ同時に急降下を始めました。眼下には雪で覆われた森が拡がり、ソリはそこを目指して降りている様です。

「追って来るよ!」

後ろを見ていたリューリクが叫びました。戦闘機は上下に並んで迫って来ますが、下の戦闘機が先行して居ました。それがみるみる近づいて来ました。

「下を塞いでサンドイッチにするつもりだな。間に合うか?・・・駄目だ」

間に合わないと見たリューリクは、周りを見回して、山の右前方斜面にある亀裂を見つけました。

「ノースさん、あの右の亀裂!」

「了解、皆右の亀裂へ急ぐぞ。あと少しだ。頑張れ!バルトロマイ様とフィリポ様が来る!」

その言葉に一気に元気づいたトナカイ達が、残り少ない力の限り足を速めると、ソリは右へ急カーブを描きました。ソリは左へ大きく振られ、アーリャとリューリクは左の袋に身体を押し付けられると、その下を戦闘機が通り過ぎて行きました。

ケル隊長は軽く舌打ちし、ソリの行方を見定めると

「ドナル、目標は山の亀裂に逃げ込むつもりのようだ。亀裂を撃って引導を渡してやれ」

「了解、亀裂を撃ちます」

復唱を終えるとドナルは、山の亀裂に照準を合わせ、ミサイルを2発放つと山との衝突を避けるべく、急上昇しました。

ミサイルは白煙を引いて飛び、山の亀裂の上部に命中しました。その瞬間赤い閃光が走り、爆炎があがると、山の斜面がゆっくりと崩れて行きました。忽ち亀裂は埋まってしまいました。目の前でそれを見たリューリクは、唇を嚙み

「やられた。亀裂が塞がれた」

「どうする?リューリク」

ノースの問いに

「とにかく逃げられるだけ逃げよう。それしかないよ」

「了解、リューリク」

「皆、疲れてるだろうけど、あと一息よ。最後まで走るわよ」

サーミの言葉にトナカイ達は全力疾走で答えました。ソリは山の斜面に沿う様に飛んで行きます。

「まだ逃げるのか?無駄だよ。とことん追い詰めてやる」

ケル隊長は逃げるソリを追いかけようとしましたが、その時何かが接近して来る事を告げる警報音がしました。

「何だ?」

ケル隊長がレーダーサイトを覗くと、戦闘機の左右から光点が近づいて来ていました。

それはやがて目視出来る程に成りました。ケル隊長が接近してくるものが何かを知った時、驚きの余り息が止まりそうになりました。それは鈴の音を響かせながら接近して来ます。

2人ともソリに立ち、手には大袋を持っていました。

「サ、サンタクロースだとう?本物なのか?2人とも・・・」

「た、隊長。あれサンタクロースですよね?どうしたら・・・」

ドナルは既にケル隊長の背後に付いていました。

「狼狽えるな。我々は任務を遂行するだけだ」

言うなりケル隊長は機首をサンタクロースに向けると

「ドナル、貴様は右へ行け。機銃でもお見舞いしてやれ。俺はこいつを片付ける」

言うやそのままサンタクロースに突っ込んで行きました。直後にドナルの機体が右へ旋回します。ケル隊長はターゲットスコープにサンタクロースを捉えると、照準を合わせ引き金を引きました。連続銃撃音と共に機体が振動し、銃弾がサンタクロースの身体を打ち抜くかと思われた瞬間、信じられない光景がそこに展開しました。発射された銃弾が次から次へと大袋の中に吸い込まれて行ったのです。それだけでは在りません。機体の操縦が効かなくなり、しかも目の前のサンタクロースが次第に巨大化していったのです。

「ば、化け物とは此れだったのか・・・」

ケル隊長はその言葉を最後に闇に飲まれました。

その光景を目にしたドナルは、慌てて回避しようとしましたが既に手遅れ。

機体は回避も出来ず、大袋に吸い込まれて行きました。

2人のサンタクロースはそれぞれ大袋を閉じ、互いに接近しました。

「フィリポも来たのか」

「当たり前だ。バルトロマイ」

2人は大袋を片手に並んで飛んでいます。2人の顔には笑みが浮かんでいました。

「ニコラスを探そう。この近くに居るはずだ」

フィリポは頷くと

「イナリ、ノースと連絡を取ってくれ。今迎えにいくとな」

「了解、あるじ」

2つのソリは湖を目指して並んで飛んで行きました。


湖の畔ではトナカイ達が、薄い氷を割って水を飲んでいました。皆くたくたに疲れていて、薄雪の大地に身を沈めています。

リューリクは、やっと安心したのかしゃくりあげているアーリャを抱きしめていました。

その時

「リューリク、仲間が来る。すぐ近くだ」

ノースが力強く伝えると、リューリクは震えるアーリャを抱きしめたまま

「アーリャ、もう大丈夫だ。助けが来た・・・」と言いました。

アーリャの眼に涙が溢れて落ちました。

やがて鈴の音が遠くから聞こえ出し、次第に大きくなりました。そして遂に2人のサンタクロースが、それぞれ8頭立てのソリと共に現れたのです。

「此処にいたのか・・・ニコラスは?」

「ノース、大変だったな。良くやった」

2人はソリを着地させながら言いました。

「疲れたぞ、フィリポ様、バルトロマイ様」

「ご苦労だった。今の内は休んでてくれ」

バルトロマイはアーリャとリューリクに近づくと前かがみになり目線を合わせました。

「怖かったろう・・・もう大丈夫だ、心配ない」

その言葉にアーリャは泣き出しました。リューリクは泣き出しそうになるのを必死に堪えている様でした。

「寒かったろう、今火を起こす・・・」

フィリポが既にその準備をしている様でした。身体が温まり2人が落ち着いた頃、

「君たちに聞きたい事がある。ニコラスはどうした?知って居るのなら話してくれんかね?」

リューリクが今迄の経験を話すと2人の顔色が変わりました。すぐさま

「フィリポ、大至急基地へ行ってくれ。儂は後からこの子たちと一緒にいく」

「わかった。後は任しときな。ニコラスは必ず助ける」

その言葉を残し、フィリポは飛び去って行きました。






























 
 
 

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