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子供達へのお話 物覚えの悪いサンタさん ③

  • white-eagle1958
  • 10月20日
  • 読了時間: 3分

2025.10.17


お爺さんは自宅から少し離れた所にある、トナカイたちが居る丸太小屋へと荷車を引いて行きました。中には飼い葉桶が10個程。それぞれいっぱいの草が入って居ます。

外はクリスマスが近づくに連れ、木々が彩を増していました。

朝の空気はしんと冷え、白い息を吐きながら歩いて行くと、落ち葉が音を立てるのでした。

お爺さんが戸の無い小屋に着き、

「みんな元気か?食事の時間だ、今用意をするからな」と言うと、トナカイ達は一斉にお爺さんに首を向けました。

「あるじだ」

「あるじ」

「ご飯だ、ご飯」

トナカイ達は口々に言いながら、足取りも軽くお爺さんへと近寄って行きました。

「ノース、サーミ、バルト、サイマ、オラル、ロッカ、エンネ、ピエリ、ヤンマー、カイヌー、皆居るな?さあ、ご飯だ。その後少し話がある」

そう言うと、お爺さんは荷車から飼い葉桶を取り出し、一頭、一頭の前に置いて行きました。

「うれしい、ニンジンが入ってる」

「ジャガイモもあるよ」

皆ご飯に夢中です。お爺さんはその間に、床の敷き藁を交換し始めました。

「あるじ、話って何だ?」

「ノースか、もう終わったのか?」

身体が大きく、角も大きなトナカイが敷き藁を運んでいるお爺さんの所へ寄って来ました。

「もう少し食べたかった」

「お前さんも大きくなったからなあ・・・分った、この次は多めに作ってこよう」

お爺さんはノースの引き締まった身体を撫でながら言いました。

「あるじ、話って?」

「そう急くな、もう直ぐこれが終わる」

そう言うと、お爺さんは額の汗を拭いました。最後の敷き藁を敷き終わると、身体のあちこちに付いた敷き藁を叩き落としました。ノースの方へ向き直ると、何時の間にかすべてのトナカイが顔を揃えていました。

「実は、旅をする事に成った」

「旅?」

「何処へ?何処へ?」

「それが・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「あるじ、忘れたの?」

「忘れたんだ・・・」

「またなの?」

「どうすんだ?」

トナカイ達は口々に言うのでした。

「心配ない。ちゃんとメモを取ってある」

お爺さんは、服のポケットからメモを取り出し開きました。

「そうだった、森と湖の国だよ。此処からは少し遠いな」

「誰連れてくの?全員?」

身体の小さなヤンマーが跳ねました。

「今回は調査なんで、2頭だ。ノースとサーミ。後はお留守番だ」

「え~っ、つまんない。私も連れてって」

「カイヌーはまだ小さいからお留守番だ。旅はもう少し大きくなったらな」

「え~っ」

カイヌーは不満そう。

「あるじ、何時行く?」

「これから直ぐだ。10時には、ここを出る」

「分かった。準備しとく」

「久しぶりね、旅すんの。森と湖の国かあ、楽しみね」

「遊びに行くんじゃないぞ」

「わかってる」

「じゃ、頼んだぞ。自宅で待ってる」

そう言うと、お爺さんはトナカイ小屋を後にしたのでした。










 
 
 

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