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子供達へのお話 物覚えの悪いサンタさん ㉑

  • white-eagle1958
  • 2025年12月31日
  • 読了時間: 8分

更新日:1月3日

2025.12.30


その頃、アーリャとリューリクはトナカイ達と共に基地近くの林に身を隠して居ました。

トナカイ達が戻って来てからどれ位時間が経ったでしょう。

「サンタさん遅いね、大丈夫かな・・・」

アーリャが膝を抱えて呟きました。リューリクがアーリャの両肩を掴み

「心配すんなって。きっと無事に帰って来るよ」

と明るく言いました。

その時、突然基地にサイレンが鳴り響き、連続爆音と共にサーチライトの光が飛び回りだしたのです。

「何?何が起きたの?」

「・・・・・・サンタさんが見つかったのかもしれない・・・・・・」

アーリャの問いに答えるリューリクの表情が強張りました。

トナカイ達も不安を隠せない様子です。頻りに足を動かし始めました。

「あるじ・・・」

ノースはそう言ったまま基地を凝視していました。

「何してるの?早くサンタさんの所へ行かなきゃ」

「合図がまだだ・・・」

「そんな事言ってる場合?」

「合図がまだだ・・・」

ノースが下を向き、地面を掻き始めると

「皆、何時でも行ける様準備よ」

サーミの声にトナカイ達が一斉に身体を震わせました。するとリューリクが黙ってソリに乗り込んだのです。そしてアーリャの方を向き

「アーリャは此処に残った方がいいよ」

「嫌、私も行く。私を一人にしないで」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

リューリクの言葉も待たず、アーリャは乗り込みました。リューリクがしかめっ面をしていると「メリークリスマス!」の言葉が基地から小さな声で、でもハッキリと聞こえたのです。その言葉を待っていたとばかりにトナカイ達が一斉に猛スピードで走りだし、アーリャとリューリクの身体を強烈に背もたれに押し付けました。

アーリャとリューリクを乗せたソリは、まるで矢の様に基地へ飛んで行きました。


サンタさんはサーチライトが照らす中、大袋を開け閉じ紐持ったまま銅像の様に身動き一つしませんでした。

「あれはサンタクロースか?何でこんな所に居る?」

ヘリコプター機長のトバスが首を傾げながら独り言を言いました。そして

「お前は誰だ?所属は?何でこんな所に居る?」

「・・・・・・・・・・・」

「質問に応えろ。さもないと」

機長は機銃の引き金を引きました。次の瞬間機銃掃射の音がし、細かい振動がヘリコプターを揺らしました。弾丸がサンタさんの足元の地面を穿ちます。

サンタさんはこちらを睨みつけたままでした。

「もう一度だけ言う。お前は誰だ?所属は?何でこんな所に居る?」

「・・・・・・・・・・・」

「あくまで言わない気か?まあいい、そこを動くなよ。とっ捕まえて吐かせてやる」

そうこうしている内に捜索に当たっていた全ヘリコプターがサンタさんの前に集まって来ました。それを見た機長のトバスは勝ち誇った様に

「もう逃げられんぞ。大人しく観念しろ」

その声にサンタさんは、不敵な笑みで応え閉じ紐を引きました。

と同時にヘリコプターが大きく揺れ始めたのです。

「な、何だ?何が起きてる?」

ヘリコプターが大きく傾きだしました。機長は慌てた様子で

「ウツ、機を立て直せ」

「機長、操縦桿が効きません」

「何だとお・・・」

「き、機長、前を・・・」

ウツの悲鳴にも似た声がトバスの耳を打ちました。顔を上げるとフロントに何故か巨大化したサンタクロースが映っていたのです。それは見る間に更に大きくなりこちらに迫って来ていました。

「うわあああああああああああああああ」

機内の全員が絶叫を放ちましたが、やがて闇に包まれて静になりましたが、それを見ていた残存ヘリ総てがパニックに陥りました。

「な、何なんだ?何が起きたんだ?」

「し、信じられない」

「此れは夢か?俺達は悪夢を見てるのか?」

「どうしたら良いんだ?どうしたら・・・」

「撃て、全部撃っちまえ!」

「ダメです。狙いが定まりません」

「ば、化け物・・・・・・・・」

全機のフロントに巨大なサンタが現れ、兵士全員が大きく目を見開いたまま、闇に吸い込まれて行きました。サンタさんは大きなため息を一つ付くと額を拭いました。

「ふう、どうにか片付いた・・・さて、そろそろ」

言いかけた時、後ろから声が掛かりました。

「サンタさ~ん、無事~っ?」

「迎えに来たよ~っ」

サンタさんが後ろを振り返ると、ソリでアーリャとリューリクが手を振って居ました。

サンタさんは驚いた顔をして

「アーリャ、リューリク、何で来た?」

「何でって、サンタさんが心配で・・・」

「何か役に立てるかと思って・・・」

サンタさんは思いっきり困った表情を浮かべ

「やれやれ、此れではせっかくの配慮が台無し・・・まあいい、仕方ない。では2人でこれらの袋を積むのを手伝ってくれ。急いで」

と言った瞬間、3発の閃光弾が打ち上げられました。と同時にエンジンの咆哮が轟き、キャタピラーの回転音が響いたのです。

「いけない、戦車が来る・・・」

更に追い打ちをかける様に夜明けの空から飛行機が近づいて来ます。

「戦闘機か?・・・」

途端にサンタさんの動きが激しくなりました。3人は大袋を次々とソリに載せ、アーリャとリューリクもソリに乗りました。そしてトナカイにこう言ったのです。

「ノース、サーミ、この子たちを無事に家まで帰すんだ。頼んだぞ」

「サンタさんはどうするの?一緒に帰らないの?」

「大丈夫、心配ない。私には考えがある。さあ行け」

「あるじ・・・」

「あるじ・・・」

「グズグズするな。ノースさあ行くんだ。全速力でな」

「了解、あるじ」

「全力で行くわよ」

言うや、トナカイ達は全力疾走を始めました。そしてあっという間にソリは基地を離れて行ったのです。サンタさんはソリを見送ると振り返り、近づく戦闘機と戦車隊を睨みつけました。


「誰だ?このサンタ?誰かこのサンタに見覚えは?」

戦車のフロントパネルに映し出されたサンタクロースを見て、ナグル司令官は周囲に尋ねました。

「無いですね。始めて見る顔です」

オドス戦車隊長は、パネルを見つめたまま答えました。戦車が6両、雪煙を上げて進みます。その後に重装歩兵が100人程続いていました。

「・・・とすると侵入者か・・・しかしヘリコプター隊が見当たらんな。何処へ消えた?」

そこへ別の隊員が顔を蒼白にして振り向きざまに叫びました。

「司令官、隊長、此れを見て下さい。信じられません」

「何だ?どうした?幽霊でも見た様な顔をしてるぞ」

その隊員は身体中を震わせながら言いました。

「幽霊の方が、まだましかもしれません」

「どういう意味だ?」

「とにかくこれを・・・ヘリコプター隊から送られてきたものです。今フロントパネルに流します」

隊員が映像機器を操作すると巨大化するサンタクロースと闇が映し出されたのです。

一同、唖然とし声も出ませんでした。

「それとこれも・・・恐らくタタクの声だと思われます」

そう言って再び機器を操作すると(ば、化け物・・・)と言うタタクの怯えた声がし、

その後音声が途絶えました。

「そのサンタとの距離は?」

「500m」

「全車両直ちに停止、様子を見る」

「戦闘機隊のケル隊長から入電。指示を待っています」

「サンタの映像を送れ。迂闊に攻撃するなと伝えろ」

「了解」

「それからこの映像を全員に流せ。対策を練る」

「了解」

戦車隊は直ぐに動きを止めました。その後戦闘機の一機がサンタクロースの上空を旋回しました。直後に全員が驚愕し、攻撃隊すべてに動揺が走ったのは言うまでも在りません。

「これをどう理解する?」

「さっぱり分かりません。ただ我々の想像を超える事態が発生したとしか言えません」

「う~ん・・・」

ナグル司令官が頭を悩ませているとそこにまた通信が入りました。

「ケル隊長から入電。サンタクロースの映像を送るそうです」

「パネルに流せ」

直ぐに映像がでましたが、そこには身じろぎもせず立って居るサンタさんの姿が在るだけでした。

「・・・何故逃げない?」

「判りません。余程の自信が在るのか、それとも別の理由が在るのか・・・」

「巨大化してるようには見えないな・・・」

「こうして見ると我々と寸分違わぬ様に見えますが・・・」

「映像には巨大化した奴が映っているんだぞ・・・」

「どうなっているんだ、一体?」

司令官はイラつきを抑えられなくなったのか

「映像を最初から流せ、研究しよう」と怒鳴りました。すぐさま映像が切り替わり、皆食い入るように観始めました。映像が流れてすぐ、オドス隊長から声が上がりました。

「映像を止めてくれ」

「どうした?オドス」

「サンタの背後に何か映っている。拡大してくれ」

「何処ですか?」

「ここだ」そう言ってオドスは指さしました。

「わかりました」

隊員が映像機器を操作すると、そこには基地から飛び出していくサンタさんのソリが映って居ました。

「何だ?これは?」

「ソリの様ですが・・・」

「サンタのソリか?・・・まさかな・・・これ何処まで巻き戻せる?」

「やって見ます・・・・・・・・・・・これが限界です」

そう言って映し出された映像には、サンタさんを振り返るアーリャとリューリクが映っていました。

「子供か?」

「2人いるぞ」

「何でこんな所に?」

隊員達が口々に口走る中、ナグル司令官はマイクを掴むと

「ケル隊長、聞こえるか?」

「よ~く聞こえますよ。ナグル司令官」

「今から映像を送る。2機で追ってくれ」

「了解、2機で追います」

「出来れば生かして連れてこい」

「了解、生かしておきます」

ケル隊長は、指令を受けるとレーダー探知機を操作しました。

「これか?・・・」

ケルはレーダー内を移動する光点を見つめるとすぐさま

「ドナル、俺に付いてこい。追うぞ」

「了解、付いて行きます」

ケルが加速レバーを目いっぱい引くと、途端にエンジン音が高まり、後ろから機体を蹴飛ばされた様な加速が始まりました。身体を押し付けられるような強烈な圧迫。震える機体。それと共に戦闘機が空を切り裂いていきました。あっけに取られたドナルが

「置いてきぼりかよ~。隊長急ぎ過ぎだよ~」

とぼやきながらも加速レバーを目いっぱい引くのでした。

























 
 
 

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