子供達へのお話 物覚えの悪いサンタさん ⑰
- white-eagle1958
- 2025年12月19日
- 読了時間: 4分
更新日:1月7日
2025.12.18
2人が外へ出て見ると辺りは一面の雪景色でした。木々には5センチ程の雪が積もり、庭ではそれが10センチにも成って居ます。2人は共に毛糸の帽子、マフラー、手袋、厚手のコート、そして長靴姿でした。2人は思い思いに雪を踏みしめ、サクサクと音を立てる雪の感触を楽しんでいるかのようでした。追いかけっこをすると足跡が後に続きます。
「久しぶりね、一緒に遊ぶの」
アーリャがリューリクを振り返ります。その顔にバサッと雪が落ちて来ました。
アーリャの顔が一瞬で雪だらけになると、リューリクが笑いながら逃げて行きました。
「やったわね~っ」
アーリャが雪を掴んで追いかけ、リューリクの背中めがけて雪を投げましたが、それは直ぐにかわされ、雪面に落ちました。
「へたっぴい~、何処投げてんだあ」
「ちょっと、待ちなさいよ。その口に雪詰め込んでやるからあ~」
その時リューリクがふと足を止めました。アーリャはその背に思い切り雪をぶつけましたが、リューリクは立ち止ったままでした。
「なによ、どうしたの?」
追い付いたアーリャが声を掛けると、リューリクは前を指差し
「アーリャ、見てごらんよ」
2人は坂の上に出ており、眼下には煌めく街の明かりが雪で霞んで見えました。
「綺麗・・・・・・」
2人は声も無く景色を眺めていましたが、やがてリューリクが
「そろそろソリ遊びしようか?」
アーリャは大きく頷くのでした。
空気が一段と冷え、粉雪交じりに成って来ました。
「ここ降りるの?」
坂の上から見た斜面は崖の様に見えます。遠くに大邸宅の門が有り、そこでは坂はなだらかに成って居ました。時折下から吹き上げる風が、アーリャのチョコレート色の髪を靡かせました。リューリクはソリをセットし、乗り込んで左右から足を出し、踵を立ててストッパーにします。そして振り向き、顎を挙げアーリャの乗り込みを促しました。
「此れを背中に回して」
リューリクがアーリャに縄を手渡し、確認しました。
「しっかり捕まってて」
アーリャの両手がリューリクを抱き締める様に回って来ると
「いくよ」
アーリャが頷くと同時にリューリクは足を挙げるとソリはゆっくりと動き出しました。
降り積もったばかりの新雪を左右に弾きながら、ソリはスピードを増していきます。
雪がリューリクの顔を容赦なく叩き始め、雪は真横に流れて行きました。ソリの滑る音がまるでナイフを研ぐかのようです。
アーリャの手に力が籠る頃には、左右の景色も飛び去って行くようになりました。
「ヒャッホウ!」
リューリクは気持ち良さそうに、雄叫びを挙げました。見る見る門が迫ってきます。
坂がなだらかに成るにつれ、ソリはスピードを落としやがて留まりました。
「最高~」
リューリクがソリから降り、振り返ると今度はアーリャが固まり、吹き出しました。
「何だよ?一体」
「リューリク、雪だるまみたい・・・」
見るとリューリクの顔や上半身にびっしりと雪がへばりついていたのです。
「ああ、これか・・・たのしかったなあ・・・アーリャは?」
リューリクは顔や服に付いた雪を払いながら、尋ねました。
「私・・・目を瞑ってて良く判らなかった。でもスピード出てたよね」
「ダメだなあ・・・目え瞑ってちゃ何も見えないじゃないか。楽しみが半減するよ」
「そんな事言ったって・・・初めてだったし・・・」
「次は目、開けてなよ。楽しいよ」
「うん、そうする」
2人はソリの綱を引きながら、坂の端を上り始めました。雪が長靴の半分程を埋め、歩く度に音を立てました。
「私ね、リューリク」
「なに?」
「リューリクとこんな風にもっと遊びたかったなあって・・・」
「どうして?」
「幼い頃は一緒に遊んだじゃない。追いかけっこやかくれんぼしたりして・・・
でも最近はよそよそしいよね。リューリクは・・・」
「・・・・・・小っちゃな頃の様にはいかないよ。アーリャは僕にとってはお嬢様だし・・・」
「何か寂しい・・・」
「・・・今日だけは思いっきり遊ぼう。アーリャ。坂の上まで競争だ」
そう言うとリューリクは、ソリを引っ張りながら駆けだしました。
「待ってよ~、リューリク」
アーリャはそう言って、リューリクの後を追いかけて行くのでした。
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