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子供達へのお話 物覚えの悪いサンタさん ⑯

  • white-eagle1958
  • 2025年12月18日
  • 読了時間: 6分

更新日:2025年12月19日

2025.12.10


「皆、今の内にしっかりと休んでおけよ。あの山超えたら目的地だ」

サンタさんがトナカイ達にそう言ったのは、もうすっかり陽が落ちた頃でした。

前回来た湖は今はうっすらと氷で覆われ、木々は葉を全部落として寒そうです。

トナカイ達は食事を済ませ、湖で喉を潤して居ました。

サンタさんは火を起こして暖を取り、サンドイッチを頬張り、火で温めたスープを口にしました。冷え切った身体に温もりが戻って来るようでした。

暖かくなって来たからか、何時の間にか寝入っていたサンタさんの顔に何か冷たいものが触れ、目を覚ますと空から雪が舞い降りていました。

「雪か・・・これはホワイトクリスマスになるな・・・」

サンタさんは空を見上げ、そう呟くのでした。


「わあ、でけ~っ、綺麗だ~っ」

スオ社長の大邸宅の大広間に飾られた、2階に届く程の大きなクリスマスツリーを見て、黒髪でグレイの瞳をした少年が感嘆の声を挙げました。ツリーの天辺には大きな金色の星、全体に施された金や銀の丸い星、赤や黄色、青など様々な色を発するイルミネーション、ツリーのあちこちにはプレゼントが吊るされていました。

「うわあ・・・・・・」

少年が見惚れた様に佇んでいると後ろから

「こら、リューリク。此処に入って来てはいけないって言っただろう?」

執事のエリアスが広間の入り口で、厳しくリューリクを窘めると彼の首が縮みました。

リューリクは恐る恐る振り返り

「ごめんなさい。どうしても見たかったんだ・・・スオ社長のクリスマスツリーが・・・」

「いいから早く自分の部屋に戻りなさい。二度と来ては駄目だ」

執事の𠮟責にリューリクは

「は~い・・・・・・ちょっと位、良いじゃないか・・・」

そう言って項垂れたままトボトボと広間の入口へ向かいました。すると上から声が響きました。

「良いじゃないか。エリアス、今宵はクリスマスイブだ。大目に見てあげなさい」

少年の顔がぱっと明るくなり、笑顔になりました。声のした方を見上げると、黒髪で、頬髯を蓄えたスオ社長が、階段から降りて来る所でした。

「旦那様・・・よろしいんですか?」

「良い良い。ついでに君の奥方サーヤも呼んであげなさい。その方が楽しい」

「ありがとうございます。旦那様」

執事はスオ社長に深々と頭を下げました。

「良かったね、リューリク」

「アーリャお嬢様・・・」

綺麗に着飾ったアーリャを見て、リューリクは下を向きました。そして意を決したかのように顔を上げ、スオ社長に言ったのです。

「旦那様、せっかくのお誘いですが、出席出来ません。僕は部屋でやる事が在るので・・・

クリスマスツリーが見れて良かったです。ご厚意は忘れません。ありがとうございました」

リューリクはスオ社長にペコリと頭を下げると、急ぎ足で広間の入り口に向かいました。

「リューリク!」

執事は声を掛けましたが、リューリクは姿を消しました。

「旦那様、申し訳ございません。せっかくのお誘いを不意にして・・・息子には後できつく言い渡しますので・・・」

「そう畏まらないでもよろしい。でも君とサーヤは出席してくれたまえよ。今夜はクリスマスイブだ。家族だけでは少し寂しいのでね。リューリクには、後で料理とプレゼントをアーリャに持たせよう」

「ご命令でしょうか?」

「そうだ、命令だ」

スオ社長はにこやかにそう言うのでした。


「リューリク、開けて。手がいっぱいで開けられないの」

「はあ?何だよ。急に・・・」

アーリャの声に手仕事をしていたリューリクは、手を止め立ち上がってドアを開けました。

そこにはプレゼントの箱とチキンレッグ5本とフライドポテト山盛り、パンプキンパイの大皿を抱えたアーリャが立って居ました。

リューリクが訝し気にドアを開けるとアーリャはすぐさま入って来て、手にしたものを机の上に置き、辺りを見回してこう言いました。

「おもかったあ~・・・ふ~ん、相変わらずごちゃごちゃしてるね、この部屋」

「・・・ほっといてくれよ。関係ないだろ?一体何しに来たんだよ?」

「パパに頼まれた。これ持って行けって。だから来たの」

アーリャはベッドの足側に在る物を指差し

「これ、リューリクが作ったの?」

と言いました。そこにはドアの半分程のクリスマスツリーがあり、頂上には金紙の大きな星が載せられ、ツリーの周囲にはコーヒー缶で作られたカンテラが幾つも吊るされており、中ではロウソクが小さな光を放っていました。カンテラの間を埋める様にブリキ板の星が飾られています。

「そうだよ、これでも一日掛かったんだ。アーリャのとは比べ物に成らないけどね」

「・・・何やってたの?」

アーリャは部屋の中央にあるリンゴ箱と古いスキー板を見て尋ねました。

「ソリだよ。此れに乗って遊ぶんだ」

「一人で?」

「そうだけど・・・」

「私も乗る」

「は?何言ってんだよ。此れは一人乗りで」

「2人乗りにすればいいじゃない、駄目?」

「・・・・・・出来ない事はないけど・・・」

「じゃ、決まりね」

アーリャはそう言って悪戯っぽく笑みを浮かべました。

「まったく・・・変わんないな、そう言うとこ」

「そう言うとこって?」

「強引に一人で決めちまうとこだよ。こっちの都合なんか考えもしないんだから・・・

思い通りに成らないと喚き散らすし・・・」

「・・・私は・・・一緒に遊びたかっただけ・・・」

アーリャが少し、しゅんとなりました。その様子を見たリューリクは

「わかったよ。もうすぐ出来るからそこでチキンでも食べてたら?」

そう言って作業に取り掛かるのでした。

やがて・・・

「出来た」

リューリクが額の埃を拭いながら言いました。2人の目の前に在るのは、スキー板にリンゴ箱を取り付けたソリでした。リンゴ箱の後ろの板が切り取られ、スキー板に打ち付けられており、2人乗りになっていました。リンゴ箱の前方は長い縄が輪の様に取付けられ、更に左右の板の下半分が切り取られています。

「ご苦労様。はいこれ」

アーリャが大皿事リューリクの前に差し出すと

「ありがと」

リューリクは礼を言い、チキンレッグを手にして齧り付きました。

「できたね、ソリ」

「うん、どうにか」

「どう使うの?」

「乗ってみる?」

「乗って見たい」

「じゃ、アーリャが前だ。僕が後ろ」

アーリャは少し考えている様でしたが、

「私が後ろでいい。リューリクが前。さあ乗って」

リューリクが前に乗り、アーリャは後方板に乗りました。それを見たリューリクは縄をアーリャの後ろまで持って行きました。するとアーリャはリューリクの背にしがみ付き、両手を前に回しました。

「リューリクは風よけよ」

「・・・・・・はいはいお嬢様」

2人は向き合って笑い合うのでした。ふと窓の外を見てみると、何時の間にか雪が降って居ました。2人が急いで窓を開けて見ると、冷たい風と共に雪が舞い込んで来ました。

「わあ、雪だあ・・・」

2人は顔を見合わせ、はしゃぐのでした。























 
 
 

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