子供達へのお話 物覚えの悪いサンタさん ⑭
- white-eagle1958
- 2025年12月6日
- 読了時間: 4分
更新日:2025年12月31日
2025.12.01
お爺さんの住む森に朝が来ました。木々はすっかり葉を落とし、真冬の姿に成りました。
朝日がお爺さんの家を照らし出す中、煙突からは白い煙が立ち昇って居ます。
すぐ隣にあるレンガ造りの大きな倉庫は体育館程も在り、そこにはお爺さんとサンタの仲間たちが集まって居ました。お爺さんは皆を前にして、話し始めました。
「皆、聞いてくれ。いつもの通り子供達へのプレゼントは此の中だ。私とペテロ、パウロは私の家の中、それ以外の者は倉庫の中に用意してある。それぞれ担当地区と名前が書いてあるから確認してくれ。袋は多めに準備してあるから、心配ない。各々、出発準備をしてくれ。出発は、例年通り遠い地区から始める。読み上げるからよく聞いててくれ。
第一陣、ペテロ、パウロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレ、それから私だ。以上6名。
出発時刻は8時。
第二陣、ルカ、マタイ、フィリポ、バルトロマイ、トマス、以上5名。
出発時刻は10時。
第三陣、マリア、テレサ、シモンの3名だ。
出発時刻は12時。それからユダ、ユダは居るか?」
呼ばれたユダが手を挙げました。お爺さんはユダを見つめ、
「サンタ服、中々似合って居るな・・・無駄に成らなくて良かった・・・」
ユダがキョトンとして
「ニコラスさん、俺は何を・・・」
「ああ、言うの忘れた。え~と、何だっけ・・・そうそう、ユダは今回が初めてだから見習いな。パウロについてくれ。パウロ、よろしく頼む」
パウロは片手を肩まで上げて応じました。
「では各自、出発準備を開始してくれ。それからサンドイッチとチキンを用意するから出発時にランチバスケットを持って行くのを忘れないようにな。では以上だ・・・」
サンタ仲間がそれぞれの持ち場に散っていく中、サンタさんは
「ペテロ、パウロ、ユダは私に付いて来てくれ」
そう言って我が家に入って行きました。皆ぞろぞろと後に続きます。
サンタさんが家に入ったのを見届けた様にペテロとパウロ、そしてユダの前にターシャが現れました。様子がいつもと違っているのに気付いたペテロは
「どうした?ターシャ。今日はやけに静かじゃないか。何か心配事でも?」
「それなら私達が力になるぜ。同じ仲間じゃないか」
「俺も参加する。新米だけどな」
それを聞いたターシャは意を決したように
「・・・言うか言わないか随分迷ったんだけど・・・やっぱり言った方が良いと思って・・・」
「何を?」
「何の話だ?」
「ニコラスを助けてやって。あの人一人でやるつもりよ」
「だから何の話だ?」
「話してくれなきゃ分からないだろ?」
ペテロとユダの促しにターシャが、話し始めました。
話が終わった後、パウロが
「あいつは・・・まったく・・・」
「そんな面白い事、一人でやらせるか」
ペテロが無言でサンタさんの家へ入ると、それに続いて瘦せ型のパウロが上気したユダの背を軽く叩き、二人とも後に続きました。ターシャは、倉庫に歩いて行きました。
家の中に入ると不機嫌なサンタさんが大きな袋の束を手に立って居ました。
「やっと来たな、何してた?」
「仲間と少し立ち話をな。何せ久し振りだったのでな」
ペテロが何食わぬ顔で言いました。
「・・・まあ、いい。此れを渡すからプレゼントを此れに入れてくれ。部屋はペテロは隣、パウロとユダはその隣だ。やり方は今見せる」
そう言いながらサンタさんは大袋をそれぞれに幾つか渡すのでした。
「俺はいい。やり方は知ってる」
ペテロは袋を受け取ると隣部屋に入っていきました。
「ユダは初めてだったな。よく見ておきなさい」
そう言って部屋のドアを開けると、そこには天井に届かんばかりのプレゼントの山が在りました。ユダは目を丸くして
「こ、これ全部持ってくのかい?これに入るのか?」
「まあ、見ていなさい」
パウロが驚きの声を出しているユダに声を掛けました。
サンタさんは大袋の口を広げ、プレゼントの山に向けました。そして言うには
「いいかい、ユダ。此の上部にある閉じ紐を引っ張るだけで良い。後は・・・」
サンタさんが紐を引っ張ると、低い振動音がして目の前のプレゼントが浮き始め、次から次へとプレゼントが吸い込まれて行きました。あっという間にプレゼントの山が半分近くに成ったのです。ユダの口が開いたままになりました。
「後は此れを繰り返すだけだ。それから注意しておくが、紐をもう一度引くと中身が全て出てしまうからな。うっかりするなよ。ではパウロ、ユダ、準備をしてくれ。私達は第一陣だ。時間通りに出るからな。よろしく頼むぞ」
「判った」
パウロはそう言うと、ユダを伴って部屋に入って行きました。
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