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ショートストーリー 人間失格

  • white-eagle1958
  • 10月2日
  • 読了時間: 3分

2025.09.30


判決を受けたばかりの囚人達が、集まって話をしていました。

「よう、どうだった?判決。何て言われた?あの髭もじゃに?お前、ギャングだったんだよな?」

「う~ん、大した事なかったな。半日の人間奉仕って言われただけだよ。ほ~んと楽勝。地獄の法廷ってこんなものかな。半日で済むなんてよ」

「・・・お前全然判ってね~よ。まったく」

「えっ、何で?半日だろ?半日。それで済むなんて楽勝じゃん」

「バ、バカ言ってんじゃね~よ。聞いて居なかったのか?」

「何を?」

「いいか?よく聞けよ、あの人達の時間感覚は俺達と全然違うんだ」

「どう言う風に?」

「教えてやる、あの人達の時間感覚はだ、一日が千年の様であり、千年が一日の様であるって事なんだよ!」

「えっ、って事は・・・もしかして、一日が千年なら・・・半日で5百年の人間奉仕って事か?・・・」

「そうだよ、お前5百年の人間奉仕だ」

「え~っ!」

男は唖然とするばかりでした。すると大金を騙し取ってばかりいた女ギャングが

「人間奉仕って言われたらしいけど、何やるの? 私も同じ様に言われたけど、半日の人間奉仕、乳牛って・・・」

「あんた5百年の乳牛か・・・それは、まだましだな・・・俺なんか1日の人間奉仕、鶏だぜ、鶏。嫌になっちまうよ」

「あんた、千年のニワトリ?悲惨ね~っ。乳牛で済んで良かった~っ」

「ちょ、ちょっと待てよ。さっきから二人とも何言ってんだ?乳牛だの、ニワトリだのってよ。サッパリわからね~よ」

「何言ってんだ、人間失格だよ、人間失格。俺達悪い事し過ぎて人間失格になったんだよ。

それで来世は鶏や乳牛になって、罪滅ぼしをしなきゃなんなくなったんだよ。お前も同じだろ?人間奉仕。で、何やるんだよ?」

「判決の後、何か言われなかった?牛とか、ニワトリとか、よ~く思い出してみなさいよ」

「・・・そういやあ、言われたなあ・・・確か、半日の人間奉仕、豚って」

「・・・あんた5百年ブタか・・・」

「俺、5百年豚なのか・・・」

「・・・まあ、気を落とすな、オレよりはましだ・・・」

「あんたは何やったんだ?千年、ニワトリだって?」

「俺は・・・」

「この人マフィアのボスよ、人身売買や麻薬密売、武器密輸とかやってたのよね~っ」

「うるさい!ぶっ殺すぞ、このアマっ」

「もう出来ないわよ、死んでんだから、バカじゃないの、あんた」

「コノヤローっ!」

二人が睨み合いを始めると、男が口を挟みました。

「所で、あいつは誰?さっきから黙り込んだまま、ずっと下を向いているけど・・・」

「ああ、彼ね。彼はマスコミ関係者らしいわよ。何でも閻魔大王様に美化清掃業務、1日って言われたんだって・・・それからずっとあの調子。よっぽどショックだったんでしょうね・・・」

「美化清掃業務ってなんだよ?」

ブタ男が聞きました。

「知らないの?大きな声じゃ言えないけどね。ハエよ、ハエ」

「はえ?はえってあのプ~ンとか飛んでくる奴?」

「そうよ、ハエ千年ってわけ・・・悲惨よね~っ」

ブタ男とニワトリ男が口を揃えて

「悲惨だ・・・」

といいましたとさ。



 
 
 

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