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ショートショート 一枚の写真

  • white-eagle1958
  • 1月13日
  • 読了時間: 2分

2025.01.13


久し振りに一族が集まった。この家の爺さんの初七日法要の日である。

皆は思い思いに酒を酌み交わし、爺さんの思い出話に花を咲かせていた。

「あの爺さん、90になっても畑に出て行ったって?通りで畑がきれいだよなあ」

「まめに草取りしてたからなあ・・・雑草が一つもない。真面目一方だったよなあ・・・」

二十歳を超えた孫がそう言うと、白髪の叔母が何やら意味ありげに笑みを浮かべた。

「何?叔母さん、その笑いは。何か知ってるの?」

するとその叔母は笑いをこらえられない様に言い出した。

「それがねえ・・・あの爺さん、若い頃隣の娘に夜這いを掛けたって話よ。あの爺さんにもそんな頃が在ったって事ね」

「夜這いって何?」

「夜、男が女の家に忍んで思いを遂げるって事」

「へ~っ!あの爺さんが?信じられないな。写真と作物づくり以外、趣味はないと思っていたのに。人って分からないものだ」

「そう言えば・・・」

この家の主が席を立ち、奥へ引っ込んだかと思うと手に小さな箱を持って出てきた。

「親父の遺品を整理してたら、こんな物が出てきた」

「何それ?貴重品?」

「これだ」

主はおもむろに箱を開けると、小さなメモリーカードを取り出した。

「何が入っていると思う?」

「さあ・・・箱に入れてるぐらいだから、何か大切なものなんじゃないの?」

「気にならないか?」

「なる、なる。AVだったりして」

「やめなさいよ、そんな事言うの」

「それをみんなで観てみようって事だ。お前パソコン持ってきてくれ」

「合点承知の助!」

孫がパソコンを持ってくると、すぐにメモリーカードを差し込み、起動した。

「大丈夫か?」

「大丈夫、映ると思う」

皆が顔を寄せ合っていると、そこに一枚の写真が映し出された。

それは亜麻色の髪の乙女の裸身だった。

「誰だ?この娘?・・・」

「綺麗ね・・・」

皆写真の乙女に魅入られた様に動かなかった。

おしまい


 
 
 

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