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ここに正義はありますか?⑥

  • white-eagle1958
  • 2021年1月1日
  • 読了時間: 15分

2020.12.17


ここは「言う事聞かないとぶっ飛ばすぞ国」の首都、アニマルシティ。

その中心地には、雲を突き抜けて聳えるバベルの塔がありました。

その塔を中心に、放射状に道路が整備され、さらに同心円状にもなっていました。

今、その道路には時ならぬ大雪が積もり、あちこちでスリップ事故。大渋滞になっていました。車がちっとも前に進みません。

「あ~もう!これじゃ会議に間に合わない。何とかならないの?」

「無理ですよ、黒ヒョウさん。どうにもなりませんね」

運転手の馬さんがぼやくのでした。

「わかったわ。ここまででいい。後は駆けていくから」

「いいんですか?まだ距離ありますよ?」

馬さんが振り返りながら言うと、もうドアを開けていた黒ヒョウさんは

「私はこの方が速いのよ」

そう言い残し、凄い勢いで駆け出して行きました。

「大丈夫かなぁ。あの方は長距離はなぁ」

馬さんは、あっという間に小さくなっていく黒ヒョウさんを、心配そうに見送るのでした。

数分後、長い車列の脇で舌を出し、喘いでいる黒ヒョウさんの姿がありました。

「まだあるの?」

目の前に聳えるバベルの塔を、恨めし気に見つめるのでした。

そんな黒ヒョウさんの背後から、軽快な馬の走る音が近づいて来ました。

なんだろうと振り返ると

「おっ先~。急がないと遅れちゃうよ~」

サラブレッドのホワイトホースさんが脇を駆け抜けて行きました。

「何よ、あれ!ちょっと、待ちなさいよ!乗っけていくぐらいしてもいいんじゃないの?」

「やだよ、重たくなるから」

「なんでっすて?私はそれ程体重ないわよ。待ちなさいったら!」

いきり立つ黒ヒョウさんを尻目に、ホワイトホースさんはどんどん遠ざかって往きました。

「あいつ、いつかとっちめてやる!」

そうは言っても仕方がないので、黒ヒョウさんはまた駆け出そうとした時

「難儀してるな。何なら俺が乗っけてってやろうか?」

上から声がしました。見上げると大きなプテラノドンさんが舞い降りて来ました。

「君とのランチでいいぜ」

「いいわよ。ランチぐらいならね」

「よーし、商談成立。乗りな」

黒ヒョウさんがプテラノドンさんの大きな背中に乗ろうとした時、また声がしました。

「私も乗せてくれんかね?」

見ると、そこには大きな体のカバさんが、葉巻を燻らせながら立っていました。

「あんたを?」

プテラノドンさんの顔が、一瞬引きつりましたが

「あんたは金貨10枚だ」


バベルの塔の最上階にある会議室。今そこに続々とメンバーが集まりつつありました。

「今頃、雪が降るなんて。近頃はおかしな事ばっかりだ」

「あ~あ、足がずぶ濡れよ。後でケアしなくては」

「君はこういう時便利だな、渋滞知らずだ」

「あんたは、もう少し痩せた方がいい」

「余計なお世話だ」

「静かに!王がお見えです」

ヒツジさんがよく通る声で告げると、皆一斉に姿勢を正し口を閉ざしました。

会議場が静まり返った頃、老ライオンさんがゆっくりと現れ玉座に腰を下ろし、ヒツジさんに眼で合図をしました。ヒツジさんは頷くと緊張ぎみに話し始めました。

「只今より世界征服会議を開催いたします。各担当者は現在までの進行状況と問題点を報告願います。まずはバンブー地区担当のタイガーさんからお願い致します」

タイガーさんは立ち上がり、スクリーンに映し出された大きな世界地図を指し示しながら話し始めました。その地図には、言う事聞かないとぶっ飛ばすぞ国の支配国が、黄色で表示され、その範囲は世界の3分の2に及んでいました。

「俺んところは、張りぼて国は問題なし。俺らの言いなりだ。ミサイルぶっ放すぞ国は、時々でっかい花火を打ち上げちゃあいるが、いつもの我が国との出来レースだ。パク劇場国は相も変わらず同じ出し物だしてる。代り映えしねえな、まったく」

「歴史が古いぞ国はどうなっている?」老ライオンさんがタイガーさんを見つめながら言いました。

「あそこが何かと嚙みついて来て、手を焼いてますが、包囲網は着々と進んでます。はげ山国さえ手に入れれば、完成です。そっちの計画も進んでいます。準備万端、怠りなしってやつですね」

「ミサイルぶっ放すぞ国からボリすぎなんじゃないの?死人が多数出ているとか、噂が出ているわよ」

「俺のやり方に口を出すんじゃねえ」

タイガーさんが牙を剝いて吠えると黒ヒョウさんが身を縮めるのでした。それを眺めて、

「未だに俺たちに逆らう国がこれだけあるが、今回の計画は、これらの国を一度に叩き潰し、世界征服を一気に進めようとするものだ」

「中でも重要なのがこのはげ山国とイシュタル国。はげ山国は歴史が古いぞ国の包囲網の完成と侵攻の際の拠点に欠かせない。イシュタル国は資源と長き独裁政権でお宝もどっさり、これをごっそり頂くって訳だ」

「あそこも政権長いしな。そろそろ食べ頃ってか?」

ワニさんが大きく口を開けて舌なめずりをしました。

「何で政権が長いと食べ頃なの?」黒ヒョウさんがホワイトホースさんに聞きました。

「バカだな、長期独裁者の所には、莫大な金が集まるんだよ。これ常識」

「そこの国民が怒るんじゃないの?」

「だから、バレない様にコッソリやるんだよ。バカだな」

「バカ、バカって言わないで欲しいわね。自分じゃ何もできないくせに」

「なんだって?バカを言うなよ、これでも僕は一国の」

「お静かに願います。会議中ですので」ヒツジさんが窘めました。

2匹を睨み付けていたタイガーさんは、再び会場に視線を戻し

「次にこの計画を進めやすくする為に我が国の体制を変える必要がある。これについてはまた別の計画があり、担当はウルフだ。おい、後はよろしくな」

ウルフさんが立ち上がり、タイガーさんと入れ替わりになりました。

「世界征服を成し遂げる為に、中央集権と軍事力を強化しなければならない。

それと国民の戦意向上もだ。その計画がこれだ」

大型スクリーンに計画書が映し出されると、それを見た参加者から一斉にどよめきの声が上がりました。

「ええっ!まさか?こんな事って!」

「うそっ!マジッ!?」

「オーマイガーッ!」

「本当に、これをやるのか?・・・信じられないっ!」

「目的達成の為とは言え、こんな事までやらねばならんのか?」

会場がざわめく中、今まで口を閉ざしていた老ライオンさんがウルフさんを見ながら言いました。

「これは、これまでの我が国の主義信条からして、大きく逸脱していると思うが?」

「既に計画は着々と進行中ですよ。あなたはそこにただ黙って座って居ればよろしい。

後は、全て我々にお任せを」

「しかし、これは」

「陛下!」

ウルフさんは有無を言わせぬかの様にきつい調子で言い放ちました。

「後は、全て我々にお任せを」

深々と頭を下げるウルフさんは、念を押す様に言いました。

「だけど、誰がやった事にするんだ?こんな事誰も引き受けないぞ」

プテラノドンさんがウルフさんを見つめて言うとカバさんが立ち上がりました。

「それなら、手はもう打ってある。世の中にはこれ次第で何でもやる連中が幾らでもいるからな。もう一つ、我々の業界に都合の悪い連中を合わせて潰す。一石二鳥だ」

カバさんは懐から包みを取り出し、お手玉の様に跳ね上げました。

「都合の悪い連中?・・・ そうか、貧者に優しいぞ教のせいにするつもりだな?」

老ライオンさんが呟きました。

「あんたは!よくもまあ、こんな事に手を貸せるものだな。呆れるよ。これでまた稼ぐつもりか?守銭奴めっ!幾ら使った?」

プテラノドンさんが怒りに眼を剝き、カバさんに詰め寄りました。

「君には関係ない事だ」

「こいつ、引き裂いてやる!」

プテラノドンさんがカバさんに手を掛けようとした時、ゴリラさんと熊さん、牛さんが必死に取り抑えました。

「放せっ!こいつ、引きちぎって海に投げ込んでやるっ!」

カバさんが涼しい顔でそれを見ていました。

「こんな事絶対に許されないわ。仲間をも犠牲にするつもりなの?こんな事はあってはならない。絶対にダメよ!」

「大義の為にはやむを得ない犠牲だ」

ウルフさんが口元に薄ら笑いを浮かべて言いました。

「なんですって?もう一辺言ってみなさいよ、バカウルフ!」

「やむを得ない犠牲だあ?! 仲間を大勢死なせて、何が大義だ!」

「ふざけんなよ!あんたら!」

黒ヒョウさんとプテラノドンさん、ホワイトホースさんが、ほぼ同時に怒りの声を上げました。

「もう遅いんだよ、君たち。言ったろう?既に計画は進行中だと」

ウルフさんは薄ら笑いを顔に張り付けたままでした。

「どういう事?答えなさいよ!バカウルフ!」

「既にこの塔は我々の支配下にある。命が惜しかったらサッサとこの塔から出て往く事だ。皆、出てきな!作戦開始だ!」

ウルフさんがそう叫ぶと、会議場のドアというドアから一斉に、銃を手にした数十匹のドーベルマン兵士が現れ、たちまち周りを囲み、次第にその輪を狭めて行きました。

会議場は緊張と恐怖でいっぱいになり、あちこちで悲鳴が上がりました。

「何をする気だ?」

「正気か?」

ウルフさんが天井に向け引き金を引くと、轟く銃声三発と共にシャンデリアと天井の破片がバラバラと落ちてきました。

「静かにしてもらおう。動くな!」

会議場は静まり返りました。

「そういう事かよ、あんたら」

「随分と用意周到な事だ」

プテラノドンさんは大きく翼を広げて行きました。

「みんな、伏せてな」

「ただじゃおかないわよ、食いちぎってやる」

黒ヒョウさんが、眼に怒りを表し、地の底から響くような唸りを上げ、牙を剝いたまま、のそりのそりとウルフさん目指して歩き出しました。

「それ以上近づくな、分かってるんだろうな?」

ウルフさんは銃を構え、黒ヒョウさんに狙いを定めました。

「何の事?」

黒ヒョウさんは構わず、ゆっくりと近づいて往きました。

「仕方ない。撃て!」

その言葉が終わらぬ内に、黒ヒョウさんは大きく身を沈め、ジャンプ。

同時に再び大きな銃声が会場に響き渡りました。

その時にはすでにウルフさんの眼に、真っ赤な口を開けた黒ヒョウさんの顔が視界いっぱいに飛び込んでいました。轟く銃声一発。

ドーベルマン兵士がそれに気を取られた隙を突き、プテラノドンさんの翼が、耳をつんざく咆哮と共に大きく羽ばたきました。強烈な風と共にシャンデリアと天井の破片、埃が舞い飛び兵士たちを襲いました。のけぞる兵士たち。そこにプテラノドンさんの尻尾が唸りをあげて、横から襲い掛かったのですから堪りません。ドーベルマン兵士たちは、まるでドミノ倒しの様に次から次へとなぎ倒され、吹っ飛んで行きました。

プテラノドンさんの背後の兵が、あまりの光景にあっけに取られていると、

「何処をみてるのさ」

ホワイトホースさんの声がしました。

その声にドーベルマン兵士たちが我に返ると、なんと兵士たちの目の前に、ホワイトホースさんの大きなお尻がありました。

「なんだ?」

と思った次の瞬間、ホワイトホースさんの強烈な両後ろ蹴りが連続炸裂、ドーベルマン兵士たちはこれまた次から次へと吹っ飛んでいきました。

「地の果てまで飛んでっちまえ~!」

「そっちは任せたぞ、体制を整える暇を与えるな。一挙に片をつける!突っ込め!」

「あいよ、任しとき!」

2匹はそれぞれドーベルマン兵士の中に飛び込んで行きました。

その度に、兵士が吹っ飛んでいくのでした。数分後、

「粗方、片付いたかな?・・・」

「まあな」

プテラノドンさんは、戦意を喪失したドーベルマン兵士を前に銃を取り上げて言いました。

「黒ヒョウさんは?」

「私ならここにいるわよ」

黒ヒョウさんは会議場中央の演壇の床に、ウルフさんを両脚で押さえ付けていました。

「血が出ているな、無事か?」

「かすり傷よ、どうってことない。けど、私の顔に傷つけたからギタギタにしてやったわ、こいつ」

黒ヒョウさんが両脚に力を込めたらしく、ウルフさんが呻き声を上げました。

「計画は中止してもらおう」

プテラノドンさんがそう言うと、ウルフさんが静かに笑い始めました。

「なによ、何がおかしいの?」

「もう遅いさ・・・」

「なんだって?どういう事なのさ?」

「もう遅いと言ってるんだ。言ったろう、計画は進行中だと」

「何?まさか、今日がその日なのか?」

ウルフさんは哄笑し答えませんでした。次の瞬間、大音響と共にその場全員が下から突き上げられたように跳ね上げられ、大きなシャンデリアが立て続けに、幾つか落ちて来ました。

「始まった!終わりだ!俺も、お前たちもだ!」

「やっちゃったのか?そんな・・・」

「なんて事を・・・仲間が大勢いるのよっ!」

「王が見当たらないな、タイガーもだ。何処へ行った?」

プテラノドンさんがウルフさんを見下ろしながら言いました。ウルフさんは視線を外して

「ふん、今頃気が付いたのか、とっくに逃げてるさ」

ウルフさんが言い終わらぬ内に二度めの大音響が会議場を震わし、床がゆっくりと落ち始めました。


これより少し前、1階フロアは動物たちで溢れていました。

おやあ、両頬を膨らませたリスさんが、警備員のヒョウさんに呼び止められたようです。

「お客様、この塔に物を持ち込まれては困ります」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「お客様、お口の中の物を出して頂けますか?」

リスさんは諦め顔で、カウンターの上にどんぐりを出しました。

「お客様、もう片方もお願いします」

「え~っ!せっかく持ってきたのに」

ヒョウさんがじろりと睨むとリスさんは、恨めし気に残りのどんぐりを出し始めました。

すると、降りてきたエレベーターから一斉に動物たちが溢れだし、怯えた様に様々な鳴き声を上げながら、我先にと入口に向かって走り出しました。

「何があったんですか?」ヒョウさんが目を光らせて尋ねると

「会議場で何か起きたらしいぞ」

象さんが興奮して、長い鼻を高々と上げ大きな耳をパタつかせ、床を震わせて通り過ぎました。ヒョウさんは、その後に続いたウサギさんを立ち止まらせると、もう一度

「何があったんですか?」と聞きました。

ウサギさんは耳を折り、目をキョロキョロさせて

「銃声が聞こえたの、テロかもしれない」と言うと、身を震わせて飛び跳ねて行きました。

「大変だ!」 言うなりヒョウさんは、上司の支持を仰ぐべく警備員室に飛び込んで行きました。リスさんも勢いに飲み込まれ、一旦は逃げ出そうとしましたが、カウンター上のどんぐりが目に入ると立ち止まり、急いで頬の中に詰め込み始めるのでした。

その時、エレベーター到着の音がして、ドアが開き、中から老ライオンさんとタイガーさんが現れ、悠然と歩きだしました。その姿を見た途端、リスさんは、目を大きく開けたまま動けなくなりました。リスさんを見つけたタイガーさんが一声吠えると、リスさんは、呪縛が解けた様に一目散に逃げて行きました。

老ライオンさんとタイガーさんがバベルの塔から出て往くと、少し離れた所に一人の人間の少年が立って居ました。

「良かったあ、まだ居たんだ」

少年は2匹の姿を見ても怖がりもせず、笑顔で近づいて行きました。

「なんだ?ちび助。ここはお前なんかが来る所じゃないぞ!」 

タイガーさんが吠えました。すると、少年はむっとした顔で

「僕はちび助じゃないぞ!ちゃんとマイケルって、名前があるんだ。訂正してよ!」

とタイガーさんに食って掛かりました。

「何だと?このちび助、生意気な。頭から丸かじりしてやろうか?」

「よしなさい。まだ子供だ・・・ お前は下がっていなさい」

老ライオンさんが、そう言うとタイガーさんはすごすごと後ろに下がって行きました。

それを見届けると

「マイケル君と言ったな。君はどうしてここに来たのかな?」 と言いました。

「聞きたい事があるんだ。けど、みんな慌てて通り過ぎて行っちゃって、誰も話を聞いてくれないんだ。それでどうしようと思っていたら・・・」

「私たちが来たという訳か・・・」

少年は頷きました。

「お爺ちゃんは話、聞いてくれる?」

「お爺ちゃん?ちび助、このお方を何と心得る。恐れ多くもこの国の」

「お前は黙っておれ!」

「や~い、叱られた。いい気味」

「このクソガキ、首を引っこ抜いてやる!」タイガーさんが目を剝いて怒ると

「黙っておれと言うのが、分からんのか?」老ライオンさんが吼える様に言いました。

「しかし王様、このクソガキが」

「いいから、黙っておれ!」そう言った老ライオンさんの背後に少年は隠れ、タイガーさんに向かってあっかんべーをしました。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

無念そうに黙り込むタイガーさんを横目で睨むと、老ライオンさんは視線を少年に戻し

「話があるといったな。聞こうか」

「お爺ちゃん、王様なの?」少年は老ライオンさんを見上げました。

「この国ではそう呼ばれているがね。ただの老ライオンだよ。で話はなんだ?」

「あのね、ここに正義はありますか?」

老ライオンさんは少し戸惑った後、静かに話し始めました。

「正義か・・・ 随分と久しぶりに懐かしい言葉を聞いたものだな・・・ 私は長年、ここに住んでいるがね。ここ暫くそんなものは、見た事が無い。あるのは、嘘、誤魔化し、脅し、脅迫、不正、陰謀、強欲、そんなものばっかりだ。いい加減、うんざりしているのだがね。どうだね、マイケル君、幾つか持って行ってくれんかね?」

「いらないよ、そんなもの。正義はないの? ライオンさん、王様なんでしょ?何でも持っているんじゃないの?」

「そう、昔は持っていたんだ。何でも欲しいものをね・・・しかし君の探しているものが

あるかどうか」

「分からないの?」

「本当に欲しいものが分からなくなってしまってな・・・何処かへ行ってしまったようだ」

「新しく作れないの?正義」

「私だけでは作れないんだよ、私は歳を取りすぎた」

「家来が沢山いるじゃない。その者たちに頼めばいいのに」

「居るには居るんだがね、余りあてにならんな。正義とは程遠い連中だ」

「頼りないなあ・・・」

「私は、王というものがこれ程孤独なものだとは思わなかったよ。みんな勝手な事ばかりしている」

「寂しいの?僕が友達になってあげる」

「そうか、友達になってくれるか」

老ライオンさんは笑顔を見せました。

「王様、そろそろ行きませんと・・・」時計を見ていたタイガーさんが、老ライオンさんに声を掛けました。老ライオンさんはタイガーさんを見て頷き、少年の肩に手を置いて

「君はいい子だ。だが、ここに居てはいけない」

「えっ、どうして?」

「早く離れるんだ。急いで」

「何で?」

「いいから、早く!ここを離れろ!なるべく遠くへ!」

「わかった・・・」

少年は戸惑いながらも駆け足で離れて往きました。その姿を見送ると老ライオンさんは、バベルの塔を見上げました。その目には怒りと悲しみがありました。

次の瞬間、バベルの塔の中央部が大音響と共に炎を噴くと、忽ち塔の上層部が黒煙に包まれ破片が飛び散りました。数秒後、爆風が老ライオンさんの鬣をなびかせましたが、老ライオンさんは、上を睨み付けたまま動きませんでした。

「愚かな事だ・・・」

老ライオンさんがそう呟いた途端、再び大爆発が起き、バベルの塔の上層部がゆっくりと崩れ始めました。

「一体何が起きたんだ?」

少年は、目の前で崩れていくバベルの塔を、ただ呆然と見つめるだけでした。


その頃、崩れ行くバベルの塔の上空をプテラノドンさんが舞っていました。

「間一髪だったな」

「危なかったわ」

ホワイトホースさんと黒ヒョウさんは、バベルの塔を見下ろしながら言いました。

「これからどうなるのかしらね・・・」

「わからないよ。でも、禄でもない事だけは確かだ・・・」

「どうするの?これから」

「余り関わりたくないなあ」

「このままじゃ置かない。多くの仲間が犠牲になった。いつかこの事を世界に広めてやる」

プテラノドンさんが大きく翼を羽ばたかせました。と、

「おい、お前たち」

「何よ」

「体重をもっと減らせ!」

黒ヒョウさんがいきなりプテラノドンさんの背中に噛みつくと、途端にプテラノドンさんがよろめきました。

「なんて事するんだ。危ないじゃないか!」

ホワイトホースさんが滑り落ちそうになり、背中にしがみついたまま叫びました。

「こいつが余計な事いうから」

「俺の背中で暴れるんじゃねえ」

「あんたが悪い」

黒ヒョウさんとホワイトホースさんが口を揃えて言いました。

「はい、はい」

プテラノドンさんが高く舞い上がり、風に乗って飛んでいきました。















 
 
 

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