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ここに正義はありますか? ②

  • white-eagle1958
  • 2020年11月17日
  • 読了時間: 5分

2020.11.17

とある警察署の裏口に、一台のワゴン車が甲高い音を立てて止まりました。

ドアが開き、中から一人の男が警察官に押し出される様に出てきました。

「痛いんだよっ!もっと優しくしろよっ!」

「うるさい!さっさと歩けっ!」

二人の警察官に挟まれた男は、ふて腐れた顔で中に入って行きました。

長い廊下を歩いていると、奥からスーツを着た人が近づいて来ました。

「ヤバい。なんであの人がここにいるんだ!」

男の目が大きくなり、顔を急に下に向けました。

「何だ?どうした?」

不審に思った警察官が声を掛けていると、

「ヤス?ヤスだな?」

スーツの人が、男の前に立ちふさがりました。

「見つかっちまいましたか。旦那。」

男は、愛想笑いを浮かべました。

「見つかったじゃない!今度はお前、何やった?」

「いや~、それがね、旦那、大したことじゃないんですけどね。」

「こいつ・・・ふざけんな!」

「まあ、待て」

いきり立つ警察官を手で制すると、

「こいつは昔からの知り合いでね。何回か捕まえたことがある。」

「知り合いですか。」

「そうなんだ・・・ で、こいつは今度何やった?」

「それが・・・こいつ、とんでもないことをしでかしたんです」

「とんでもない事って、なんだ?殺しか?」

「違います」

「暴行傷害か?」

「違います」

「違うって、じゃあなんだ?」

「自分の車に小便を掛けてたんです!」

「なんだって?警察車両にか?」

スーツの人の目が丸くなりました。

「なんだってお前、そんな事を」

呆れた目を向けると

「こっちは真面目に働いているって言うのに、コソ泥扱いするから腹いせにね」

「小便ひっかけたってのか」

「思いっきりぶっ掛けた。気持ち良かった」

「コノヤロー!」

「止せっ!落ち着けっ!」

いきなり男の胸倉を掴み上げた警察官をどうにか制すると、

「この男は俺に預けてくれないか?尋ねたい事もあるしな」

警察官はじっと目を見つめると、如何にも残念そうに

「分かりました。お任せします」と言い残し、その場を離れて行きました。

その姿が見えなくなったのを確認した後、刑事と思しき人がその男に向き直り、

「で、何か掴んだのか?」

「例の事件の件でさあ」

「詳しく教えろよ」

「それは貰うもの貰わないとね」と手を差し出しました。

「まったくしっかりしてるよ、お前は」刑事さんは無造作にポケットに手を突っ込むと何枚かのお金を掴みだし、男の手に握らせました。

「へへっ、旦那ありがと」男はお金を握った手を、うやうやしく刑事さんの前に差し出しました。

「いいから、早く言え、早くしまえっ」

「・・・どうも噂は本当ですぜ、一人は処分、もう一人はお咎めなし」

「何だと?」

「いつもの事ですよ、旦那」

「いつもの事か・・・」

「そうですよ。それで街の連中はすっかり頭に来ちまって、ただならぬ雰囲気でさあ。あれじゃ、いつ騒ぎがあってもおかしくないですぜ」

「そんな状況か・・・上の連中は何を考えているんだ!」

突如、警察署内に警報ブザーが鳴り響き、その場全員に緊張が走りました。続いてアナウンスが、

「Å地区にて集団略奪事件発生、至急現場急行願います。場所は金持家・・・」

アナウンスはまだ続いていましたが、もう誰も聞いてはいませんでした。

「遂に起きちまったか?」

男が呟きました。署内は一気に騒然となりました。

「金持家って、あの金持家?」

「決まっているでしょう。他にどこがあるの?」

「あの傲慢で、噓つきで、鼻持ちならないあの金持家が、何か盗られたって言うのか?」

「何か気が乗らないなあ・・・どうせなら燃えちまえばいいのに」

「そう言うのは、よせっ!どの道全員集合が掛かるぞ」

「え~っ!他の事件はどうするんですか?」

「そんなの後回しに決まってるだろう。急ぐぞ。早くしないと大変な事になる」

「一体どうなるんです?」

初老の刑事が若い同僚の方に向き直ると、吐き出す様に言いました。

「仲間の首が飛ぶ」

「堪らないなあ・・・」若き同僚は天井を見上げました。

署員が愚痴りながら次々と出動していくのを見送ると、刑事さんが男に目配せをしました。

「・・・?」

「鈍いな。俺達も出るんだよ。これはチャンスだ」

「このどさくさ紛れにですかい?」

「そうだよ!」

「どっから?」

「表からだ」

そう言うと、刑事さんはスタスタと先へ歩いて行きました。

二人が外へ出てみると、そこに少年が佇んでいました。

「どうしたんだ、坊や?何か用かい?」

「みんな慌てて出て行ったけど、何かあったの?」

「街でちょっとした騒ぎがあってな。それでだ。で、何しに来たんだ?」

「あのね、探し物があってね」

「探し物?落し物ならこの先の受付で聞けばいい」

「違うんだ。僕が探しているのは落し物じゃないよ」

「違う?なら何を探しているんだ?」

「あのね、ここに正義はありますか?」

「は?なんだって?」

刑事さんの目が丸くなりました。

「は、こりゃいいや。旦那、ここに正義があるかだってよ」

男が笑いを堪える様に言うと、刑事さんが睨み付けました。

「悪いな、坊や。正義ならこれから行って来るところだ!」

そう言うと、刑事さんは怒った様に出て行きました。その様子を見た少年が、

「何か僕、いけない事言った?」

「い~や、坊主。お前さんは何も悪くない、たまたま旦那の虫の居所が悪かっただけさ。

だが坊主、お前さん、何でそんなものを探しているんだ?」

少年は、少し迷った様子で口を開きました。

「お父さんがね、この国には正義がないって怒っているんだ。それで探しに来たんだけど・・・」

「そうか、それでか。だけどな・・・」

男はふと警察署を見上げ、それから少年の肩に手を置き言いました。

「いいか、坊主。よく聞けよ。ここはお前さんが思っているような場所じゃない。

ここは正義より力と金がものを言うところでな。お前さんが探しているものは、見つからないよ」

「えっ・・・でも僕は・・・」

「どうしても、そいつを探すつもりかい?」

少年は小さく頷きました。

「じゃあいい事を教えてやる。あのな、正義が欲しけりゃ金出しな」

「えっ!」

ポカンとした少年を後にして、男は去って行きました。

「お金がないと正義はないんだ・・・」

少年は下を向いたまま、警察署を出て行きました。

















 
 
 

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