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子供達へのお話 物覚えの悪いサンタさん ㉓ 

  • white-eagle1958
  • 1月3日
  • 読了時間: 8分

更新日:1月4日

2026.01.03


サンタさんと戦車隊、重装歩兵の一隊の睨み合いは、夜明けまで続いていました。

東の空が明るくなり、日の出が間近である事を知らせています。

身を切る様な冷気の中、サンタさんは立ったまま身動き一つしませんでした。

「クソッ、どうして動かないのか?どうして?」

ナグル司令官はイラついたのか、狭い戦車の中で、立ったり座ったりを繰り返して居ました。そこへ再び驚くべき通信が入ったのです。

「司令官、此れを見て下さい。一つはケル隊長機、もう一つはドナル機のものです」

「何だと?」

通信員が映し出した映像を見てナグル司令官は、愕然としました。そこには巨大化する別のサンタクロースが2人も映っているのです。

「ケルとドナルとの連絡は?」

「今やって居ますが、連絡取れません。どうやっても取れないんです。通信途絶です」

通信員が手元の機器を忙しく操作しながら答えました。

「仲間がいたのか・・・」

ナグル司令官はしばし考え込んで居ましたが、やがて意を決したのかこう言いました。

「こうしてても仕方がない。動くぞ。仲間が来る前にまずは一発お見舞いしてやる。砲手、奴の左側を狙え。倉庫とは反対側だ」

「了解、倉庫とは反対側を狙います」

途端に砲塔が動き出し、サンタさんの左の空き地に狙いを定めました。さらに左にはフェンスがあり、樹木が葉を落として並んでいます。

「撃て!」

司令官の号令と共に、腹に響く発射音がし白煙が吐き出されると、砲弾は甲高い音を立てながら弧を描いて樹木の脇に着弾しました。直後に轟音と土煙が、爆風を伴って上がりました。サンタさんを瓦礫と猛烈な爆風が襲い、サンタさんは吹き飛びました。が、ふらつきながらも立ち上がり、こちらを睨みつけたのです。額からは血が流れ出ていました。

戦車から呼び掛けが有ったのは、この時です。

「いい加減降参しろ。もう何処にも逃げられんぞ。10秒だけ待ってやる。10秒過ぎたら殺す」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

サンタさんは何も応えませんでした。ですが微かにほほ笑んだのです。サンタさんの耳には微かに鈴の音が届いていました。次第に大きくなっていく多数の鈴の音が。

「この期に及んで、何笑っているんだ?・・・どうしても降参しない気か?なら貴様に死をくれてやる。粉微塵に成って死ね」

言うや司令官は全戦車に指令を出しました。

「全砲塔、あの化け物サンタを狙え」

その言葉と同時に戦車の砲塔が動き出し、サンタさんに狙いを定めました。

その時通信員が叫んだのです。

「司令官、何かがこちらへ向かっています。全方向から数は10、そのうち2つは・・・もう目の前です」

通信員の叫びは絶叫になりました。

「何だと・・・」

レーダーサイトを見た司令官は言葉を失いました。レーダーサイトの中には10個の輝く点が、基地を囲むように近づいて来ていて、内2つはサンタさんのすぐ近くで輝いていました。と同時に全戦車内に不思議な鈴の音が響いたのです。それは外の重装歩兵隊にも聞こえていました。皆不思議そうに辺りを見回しています。

「何だ?鈴の音?・・・」

司令官は耳を澄ましていましたが、戦車隊長のオドスが焦れたのか

「司令官、早く指令を」と促すと、司令官は我に返ったかのように

「わかった、撃て!」と号令を出しました。途端に全砲塔が一斉に火を噴き、轟音が基地を震わせ、鈴の音をかき消しました。飛んでくる砲弾の音は紛れもなく死の音でした。

サンタさんは瞬間目を瞑り、両手を広げました。そしてその瞬間を待つが如く、立ち尽くしていたのです。ですがその瞬間は中々やって来ませんでした。

「?????????????????????」

「何時まで目を瞑っているんだ?ニコラス・・・」

聞き覚えのあるその声にサンタさんは目を開け、声のした方を見て見ると、木々の上空にペテロが袋を持ってソリの上に立っており、サンタさんと視線が合いました。

「ペテロ、何でここにやって来た?」

「ターシャが話した・・・」

サンタさんは一瞬固まりましたが、

「そうか・・・ターシャが・・・それじゃ皆も・・・」

「そうだ、皆来るさ。良かったぜ、間に合って」

後ろから声がしました。振り返ると倉庫の上空にパウロとユダがソリに乗っており、パウロが口を開きました。

「お前さん、どうして皆に言わなかった?」

「・・・・・・すまん。言うのを忘れてな・・・」

「忘れただあ?・・・物忘れにも程があるぞ。ニコラスさん。こんな面白い事一人でやろうとするなんてずるいな」

サンタさんは無言で応える他は在りませんでした。


「どうした?何が起きたんだ?」

ナグル司令官は目の前の状況が理解できず、混乱している様でした。乗務員全員があっけに取られ、声も在りませんでした。

「状況を確認する。録画を再生しろ」

フロントパネルに移す出された映像を見て、一同息を飲みました。それは全砲弾がサンタクロースに命中するはずが急カーブを描き、いつの間にか現れたサンタクロースの袋に、総て吸い込まれて行くものでした。

「信じられない・・・」

誰もがそう呟きました。そう思ったのも束の間、今度は4人のサンタクロースが動き出したのです。勿論全員大袋を手にしていました。その時通信員の叫びが戦車内に満ちました。

「9時の方向からきます。3時の方向からも。後、8時と6時、4時もです。囲まれました」

「総員各個撃破せよ。急げ!」

司令官はどこからともなく聞こえてくる鈴の音を聞きながら指令を出したのです。

4人のサンタは、恐れを知らぬかのように横一列になって迫って来ます。

「何なんだ?こいつらは?戦車を前にどうしてこんな真似ができる?」

「司令官、良いから早く仕留めましょう」

促すオドス戦車隊長を一瞥したナグル司令官は

「私に命令するな、オドス。指揮官は私だ」

そう言うと、マイクを口に当て

「撃て!奴らを吹っ飛ばしてやれ」と言いました。

直ちに6本の砲塔が動き出し、4人に狙いを定めると次々に轟音を放ちました。

その音が4人のサンタさんの鼓膜を打ちましたが、4人は平然と構え大袋の閉じ紐を同時に引っ張ったのです。すると6つの砲弾が弧を描いてすべて4人の大袋に吸い込まれて行きました。

「クソッ、どうしてこうなる?何とかしろ、オドス」

「何とかしろと言われましても・・・」

「貴様私の命令が聞けんのか?この能無し、アホ、カス、オタンコナス、オンタンチンヤロー」

ナグル司令官は激しく毒づきましたが、気の毒なドナル戦車隊長は項垂れるばかりでした。

その間にも4人のサンタさんはグングン近づいています。ナグル司令官は青ざめて全車両に一時退却を指示しました。が、エンジンが咆哮し後ろに下がるかと思いきや、不思議な事が起きたのです。エンジン音が急に高まり、キャタピラーの回転音が激しくなりました。

「どうした?何故進まない?」

「判りません。何がどうなっているのか、さっぱり」

「ええい、この役立たず共めが・・・」

司令官の怒りの咆哮に誰も口出し出来ませんでした。が、その時状況が誰の眼にも明らかなものになりました。なんと戦車が浮き上がり、サンタさんの大袋めがけて動き出したのです。そればかりかフロントパネルには4人のサンタが次第に巨大化していくのが映って居ました。

「うわあああああああああああああああ」

戦車の中は阿鼻叫喚の渦でした。

「・・・化け物とは、この事だったか・・・」

ナグル司令官はそう呟いてその他の乗務員達と共に、闇に吸い込まれて行きました。

「はい、一丁揚がりっと」

ユダが歓喜の声を挙げ、3人は互いに目を合わせ静かに微笑みました。



「皆各個撃破だ。個々に殲滅しろ」

重装歩兵隊長のボコルが口で泡を飛ばして叫びました。皆それぞれに狙いを定めます。

ボコルは目の前に歩いてくるサンタさんに軽機関銃の狙いを定め、スコープを覗きました。

その中でサンタさんは恐れを知らぬように歩いていました。

「なんて奴だ。奴は死を恐れぬのか?」

その呟きが終わらぬ内に、女の声がしました。

「あ~らお兄さん、良い男ね~っ」

「そうかしら?私は右の方が好みよ」

「貴方は昔から渋好みだものね。マリア」

「そう言う貴方は若者一辺倒よね、テレサ」

ボコルは狙いを外し、振り返りました。目にしたのは、大袋を手にした2人の女性サンタクロースでした。

「ふざけやがって、ぶっ殺してやる」

頭に血が昇ったボコルはすぐさま2人に狙いを定め、引き金を引きました。

するとどうでしょう。軽機関銃から小鼓を打つ様な音が連続し、放たれた銃弾が総てサンタクロースの袋に吸い込まれて行ったのです。そればかりでは在りません。身体が急に浮き上がり、サンタクロースの袋に吸い寄せられて行くのです。唖然とするボコルの耳に女性サンタクロースの声が響きました。

「前言撤回、良い男だけど、行ってる事と持ち物が行けずね。野蛮人」

「まったく同感。好みは違うけど、そういう所は一緒ね、テレサ」

ボコルはその声の中、吸い込まれまいと空中を必死に泳ぎましたが、あえなく足から吸い込まれて行きました。

「うわあああああああああああああああ」

と同時に十数人かの重装歩兵が、恐怖の叫びをあげながら同じ様に吸い込まれて行きました。その辺りに兵士が居なくなったのを見届けるとマリアが

「女を舐めないでよね」

と言い、テレサとハイタッチするのでした。





















 
 
 

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