笑い話 契約金

2023.12.20

長屋の大家さんの所へ、また熊さんが駆け込んで来ました。

「大家さん、てーへんだ！てーへんだ！」

「何だい熊さん、大騒ぎして。またどこぞの国が、ミサイル連射でもしたのかい？」

「ああ、あんときゃあ奴ら何ブチ切れたんだか知らねえが、23発撃ちまくり。今回は2発で終わったそうですがね。相変わらず何考えてんだか・・・じゃなくて、聞きました？」

「何を？お前さんの粗忽話なら一杯聞いてるよ」

「あっしの事じゃあなくって、大谷選手の事ですよ。大リーガーの」

「大谷選手がまた一試合３発でもホームラン撃ったのかい？」

「３発撃ったかどうかは知りませんがね・・・そうじゃなくって、契約金ですよ、契約金」

「契約金？マリナーズに移ったとか移らなかったとかかい？」

「まったく、大家さんはこの手の話に本当に疎いなあ。マリナーズじゃなくて、ドジャースですよ、ドジャース。そことの契約金が1016億円とか。巷じゃ大騒ぎになってまさあ」

「1016億円？全然ピンとこんなあ。余りに凄すぎて・・・」

「そうですよねえ・・・それだけありゃあ、うなぎ屋の特上かば焼き、幾つ食えますかねえ・・・」

「お前さんが死ぬまで食ったって、お釣りがくるだろうよ」

「寿司屋の特上握りも幾らでも食えるって訳で・・・」

「それどころか、店ごと買えるよ」

「成程、食いたいもんの店丸ごと買えるって事ですかい。するってえと・・・」

「おいおい、まさか食いもんの店買い集めるつもりじゃあるめえな」

「えっ！どうして分かるんですかい？」

「お前さんの事なら尻に毛が生えている事まで知ってるよ。長い付き合いだ」

「他に豪華なマンションとかも買えるんでしょうねえ・・・雨漏りしたり、隣の声が筒抜けの安長屋と違って・・・」

「安普請で悪かったな」

「いやいや、そんなつもりじゃ」

「じゃ、どういうつもりだ？」

「こりゃいけねえ、風向きが怪しくなって来やがった。ではこの辺でお暇を、どの道あっしらにゃあ、関係のない話でさあ」

「まあ、いいんだけどね、熊さん。話ついでだが、今月の家賃何時持って来るんだい？」

「・・・こりゃ藪蛇だった。それもあっしにゃあ関わりのない話でござんすよ！」

「おい、ちょっと。待ちなさい・・・ったく！こういう時は逃げ足が速いんだから！」

お後がよろしい様で・・・