笑い話 タクシーの行先 ③
- white-eagle1958
- 2024年1月6日
- 読了時間: 2分
2024.01.06
運転手が客待ちをしていると、老紳士が慌ただしく乗り込んで来ました。
「すまないが君、ホワイトプリズンへやってくれ」
「は?お客さん、今何と言いました?」
「ホワイトプリズンだよ。聞こえなかったのか?」
「いえね、聞こえましたけど、お客さん。ここはワシントンですが、そんなとこ何処にも・・あ・・・もしかしてお客様は」
老紳士は神妙な顔をして、人差し指を唇に当てたのでした。
「分かってくれたかね?」
「はあ、何となく・・・でもいいんですか?お客様、この車で?今頃何処かで大騒ぎになってませんかねえ・・・」
「いいんだよ、毎回プロレスラーに囲まれ、戦車みたいな車に押し込められては気詰まりでなあ・・・ロクに話も出来んのだ」
「何となく分かる様な気がしますねえ・・・」
暫くそのまま時間が過ぎて行きましたが、やがて老紳士が笑みを浮かべたのでした。
「プレジじゃない、お客様?何かいい事でもあったんですか?」
「ん・・・いやね、先日黒人の少年がやって来てな、ここに正義はありますかと聞くんだよ」
「へえ、そんな事があったんですか?・・・で、お客様は何とお答えに?」
「私も随分この世界に居るんだがね、ここしばらくそんなものは見た事が無いと答えた」
「プレジじゃない、お客様、正直すぎですよ、それは・・・」
「在るのは、嘘、プロパガンダ、陰謀、欲望不正義ばっかりでうんざりしているから、どれでも持って行ってくれないかいと頼んだんだが・・・」
「その少年は何と?」
「僕は正義が欲しいんだ、そんなものは要らないって言ったな・・・」
「そうでしょうねえ・・・」
「君と話してたら、ふとそんな事を思い出してな、どうしているかな、あの黒人少年・・・」
「探し物が見つかって居ると良いですねえ・・・」
タクシーは目的の場所へと走って行くのでした。
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