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小説 四次元パンツ ⑤ 渋谷駅前交番

  • white-eagle1958
  • 2024年5月24日
  • 読了時間: 2分

2024.05.24


昼前の渋谷駅前は、喧騒の只中に居ました。駅から吐き出される人の波は、次から次へと続き、途切れることがありません。それが此の交番を日本一忙しい交番に押し上げていて、本日も道案内に息つく暇もありません。

「渋谷109ですか? 線路を超えてですね。左側に行けばすぐにわかります」

立て続けに訪れた人に、慣れた裁きで道案内を終えた浦本巡査は、ほっと一息着きました。

もうすぐ昼休み、交代の堂本巡査がやってくる頃です。

(今日はどこで昼飯にしようか・・・)そんな考えは、一人の少女が血相を変えて飛び込んできた時から吹き飛びました。

「お巡りさん、大変、大変」少女の様子が只事ではないのを見て取って、

「落ち着いて、落ち着いて、どうしました?」

「パンツが、パンツが・・・」どう説明したらいいのか分からず、少女の口からはそれしか出てきませんでした。

「パンツ?変質者にでも襲われました?」

「そうじゃないけど、とにかくパンツが浮かんでて、追いかけられて」

「浮かんだパンツが追いかけてくるって?君は何を言ってるんだ。分けが分からない」

「あ~っ!もう。いいから付いて来て。見れば分かるから。場所はすぐそこ」

そう言って少女は浦本巡査の手を掴むと、強引に引っ張って行きました。

「ちょっと、あ~っ!しょうがないなあ。場所何処?」転げるように走り出した巡査に、

「スクランブル交差点!」間を置かず少女は答えました。

すると近づくに連れ、人の壁が厚くなっていきました。そこからは、

「何あれ?」

「どー見てもパンツだよな。トランクスか?」

「何で浮かんでいるの?」

「パンツ型のドローン?にしては音が聞こえないよな」

「済みませーん!通して下さーい!」巡査は叫びつつ、前に前にと進むのでした。

何時しか交差点は通り過ぎ、道玄坂方向へと入り、やっと一番前に出た時、彼の目に映ったものは、赤の布地に青と黒の線が入ったチェック柄のトランクスが、空中に浮かびながら道玄坂方面へと移動している様と移動方向に居る人々が、たぶん思考停止状態のまま立ちすくみ、或いは腰が抜けたように逃げ出す姿でした。



 
 
 

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