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小説 四次元パンツ ④ 渋谷スクランブル交差点

  • white-eagle1958
  • 2024年5月22日
  • 読了時間: 2分

2024.05.21


5月だというのに茹だる様な暑さの中、昼前の渋谷スクランブル交差点は、いつもの様に人でごった返していました。世界一人が行きかう交差点の異名は伊達じゃなく、若者達が溢れ、外国人観光客の姿も目立ちます。そんな中、それは静かに、そして誰に気づかれるともなく顕われたのです。最初に気づいたのは、10代後半のカップルと思しき男女でした。

「ねえ、あれ何?」化粧っけのない若い女性が、指さしました。

「あれって?」 まだ幼さが残る顔立ちの若者が女子を見つめました。

「あれよ、あれ。分からない?向こう側の人の間に何か見えない?」

「え~っ、ちょっと待ってよ」

若者は対面している人の群れに目を凝らしましたが、何も分かりませんでした。

人々の群れが迫ってきます。

「やだあ、近づいて来るじゃない。ここ離れましょ。気味悪い」

「そんなこと言ったって、なんのことか良く分からないよ。説明してよ」

言い合っている間に二人は人の波に飲み込まれました。その時です。パンツが二人の間を通り抜けたのは。

「・・・今の何?」

「トランクスじゃなかった?」二人は目を見合わせました。

「何でトランクスがこんな所に出てくんのよ。おかしいじゃない」

「俺に文句言ったって。とにかく追いかけようよ」

「やだ、絶対追いかけたくない。私はここに居る」

「じゃ、俺が追いかけるから、君は警察に連絡を」

そう言い残して若者はパンツの後を追いかけて行きました。

この頃になると交差点のあちこちで異変に気付いた人々が、様々な声を挙げていました。

恐怖の叫びやら、驚きの声やら、中には目の前の光景を理解できないまま、固まってしまう人々まで。それを他所にパンツはふわふわと宙に浮き、道玄坂方向に飛んで行くのでした。

パンツの行き先では、まるで無人の野を進むが如く、人の波が割れていきました。

皆一様にこの世ならぬものを見たかの様な顔つきになったのです。



 
 
 

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