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小説 四次元パンツ ⑧ 某所研究所

  • white-eagle1958
  • 2024年5月29日
  • 読了時間: 4分

2024.05.28


「パンツが消えた、消えてしまった・・・」

「消えたな、見事に・・・」

「冗談じゃないですよ。僕はどうしたらいいんですか?責任取ってくださいよ」

僕は怒りのあまり所長に詰め寄りましたが、どうにもなりません。

「とにかくだ、パンツが何処へ行ったか突き止めないとな。それに君もそのままじゃ困るだろうし・・・」

所長はそう言って目線を僕の腰あたりに落とすのでした。僕も自分の腰に目を遣りましたが、そこに有るはずの僕の腰は影も形も無く、後ろの床が直接見えるのでした。

「早く何とかして下さい。これじゃあんまりだ」

「分かったから、取り敢えず飯にしよう。もう昼時だしな。そばでも頼むか。君は何がいい?この際だから何でもいいぞ。天麩羅そばの特上おごってやる」

「・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、いいですけど」

驚愕の情報が僕たちに齎されたのは、それから30分後の事でした。

「遅くなってすみません。ご注文はこちらです」

蕎麦屋さんは特上天麩羅そばを2つ出しました。

「何かあったのかい?」所長は代金を手渡しながら言いました。

「いえね、テレビのニュースに見とれてしまって。どうも申し訳ございません」

「へえ、親父さんが見とれるなんて、どんなニュースなんだ?」

「テレビをつけてみれば判りますよ、では毎度あり」

バイクで去って行く蕎麦屋の親父さんを見送り、所長は特上天麩羅そばを運んでいきました。

「さあ、食事にしよう。腹が減っては戦が出来ぬと言うしな」所長は割り箸を2つにし、大きなエビに齧り付きました。

「さすがに特上だ、エビが違うな・・・どうした?食べないのか?うまいぞ」

「・・・そんな気になれませんよ。ああ・・・」

溜息しか出てこない僕を尻目に、所長はずるずると音を立ててそばを吸い込んでいくのでした。

「そうそう、テレビを付けてくれないか?何か世間であったらしいぞ」

「ええ・・・」僕はのろのろと立ち上がり、リモコンのスイッチを入れました。

そこに映っていたのは・・・

「あれは何でしょうか? 何やら得体の知れない物が人々を襲っています」

リポーターの絶叫気味の声が、テレビから聞こえて来ました。

と同時に、所長が激しく咳き込み、そばが口から飛び散ったのです。

画面に映っていたのは、紛れもなく松田君のパンツでした。それがどう言う訳かテレビの画面にふわふわ浮かび、人々を驚かせている様でした。

「所長、あのパンツあんな所に・・・」僕が画面を指さしながら所長の顔を見た時、身体が動かなくなりました。むせかえっている所長に言わずにおれ無くなりました。

「・・・所長、鼻からそばが飛び出ていますよ・・・」

「大丈夫だ、少しわさびを入れすぎた・・・」

所長は涙目になって、鼻をかみました。

「あのパンツの行方が分かっただけでもましというものだ。それで場所は何処だ?」

「某所スクランブル交差点の様ですね。周りの風景から察するに」

テレビには逃げる人々や遠巻きに見物している人まで様々でした。そして口々に

(あれはトランクスだろ。妙な物が付いている様だけど)

(だけど何で浮いているんだ?誰かの悪戯か?)

(人騒がせにも程がある)

「問題はコントロールが効かない事だな」画面を見ていた所長がポツリと呟きました。

「そうですね。コントローラーがこの有様じゃ」

僕は砕けたコントローラーを所長に見せました。修理はすぐには困難なのは一目で分かる状況です。

「これからどうしましょう?なんか大事になってますよ」

「とにかくあれを確保しなければな。あのままにはして置けない」

「確保たってどうやって?動き回っているんですよ、あのパンツは」

「固定しよう」

「だからどうやって?」

「パンツに手を突っ込んで、手近な物にしがみ付いてはどうだ?少なくとも移動は防げる」

「その後は?」

「・・・その後考えよう」

その時です。リポーターの声が画面から流れてきたのは。

「現場に動きがある模様です。どうやら警察官があの不審物を確保するのでしょうか?手に大きな網を持って近づいてきます」

画面には大勢の警察官が手に手に大きな網を持ち、恐る恐るパンツに近づいている様子が映し出されていました。

「まずい、警察はあのパンツを捕らえるつもりだ。捕まると色々面倒な事になる」

「どーすんですか?このままじゃいい笑いものだあ」

「待て待て、いいか、あの網に捕まる瞬間、柄の部分を掴むんだ。すると相手はびっくりして網を振り回すだろう。そしたら手を放すんだよ。そうすれば」

「なるほど、その場から離れられる・・・そう上手く行くかなあ?・・・」

画面では警察官が大きく網を振りかぶっていました。

「迷っている暇はない。やるんだ!」

「ええい、ままよ!」

叫びと共に僕はパンツの中に手を突っ込んだのでした。



 
 
 

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