小説 四次元パンツ ② 未知との遭遇
- white-eagle1958
- 2024年5月20日
- 読了時間: 4分
2024.05.20
丁度その頃、研究所から少し離れた所に、黒いボックスカーが停まっており、中には2人組の中年男性が居ました。一人はヘッドホンを着けています。
「・・・どうした?何か聞こえるか?」
如何やら研究所を盗聴している様です。
「いや、特には・・・でも何だろう」
一人の男は首を傾げつつ、答えました。
「聞こえなかったのか?」
「いえね、聞こえたのは聞こえたんですがね、ハッキリと。でも聞き違いかも知れない・・・」男は自信なさげに返しました。
「何だ?兎に角言ってみろ」
「う~ん・・・四次元何たらかんたらとか言ってました」(四次元パンツって何だよ)
「四次元? あの所長次元を超えるものを造っていたのか。それは凄いぞ、それをそっくり頂いちまおう。出るぞ・・・どうした?浮かない顔して、何か在るのか?」
「いや、もう少し情報を集めた方がよくないか。少し不安があってな・・・」
「何だ、それは?こう言うのは早いに越したことはないんだ。お前がやらないなら、俺一人でもやるぞ。久々のビッグチャンスじゃないか、これをものにしないでどうする」
「・・・分かったよ、俺もチャンスは逃したくない」(しかし、四次元パンツ・・・)
二人はボックスカーを出ると、研究所へ向かっていきました。
「所長、こんなもので良いですかね?」僕は怪しげな四次元パンツとやらを身に付け、所長に披露しました。
「中々似合うじゃないか。履き心地はどうだね?」
「この機械の所がちょっとねえ。少し嵩張るかなあ。このベルトは?」
「そのベルトはしっかり締めて置き給え。万一外れると困ることになる」
「外れるとどうなるんですかね?」
「そりゃあ・・・想像し給え」
「・・・止めておきます・・・」
そうこうしている内に準備が整ったと見えて、所長が切り出してきました。
「では、実験概要を説明する。今回は小規模なもので、範囲は此の研究所内ですべてだ。
スタートはこの部屋であり、目的地は研究所内のトイレだ。そこで用を足し、またこの部屋に戻ってくれば実験は終了。コントロールは私が行う。分かったかね?」
僕は頷く他はありませんでした。
「では実験を開始する」そう言って所長が手元のコントローラーのスイッチを入れると、
微かに虫の羽音と共にパンツ上層部に光の点滅が始まりました。緊張の連続で冷や汗が流れます。次第に羽音が大きくなり、点滅も速くなって来ました。
その時僕は、自分の目を疑いました。何とパンツが僕の身体から離れ出したのです。
気が付いた時には、パンツは僕の目の前に浮かんでいました。慌てて下を見てみるとパンツの部分だけがそっくり消えています。パンツの部分だけが透けて見えました。
「うわっ、うわっ、所長、どうなってるんですか?これ。僕の身体は一体どうなってしまったんですか?」
半ばパニック状態になった僕に、所長は満足げな笑みを浮かべて言いました。
「心配ない。四次元的には繋がって居るから、何の問題もない」
「そんな事を言われましてもね。何とも変な気分で・・・早く終わらないかなあ・・・」
「何をいっておる。実験は始まったばかりだ。取り敢えず、第一段階は成功だ。次はトイレまで移動だ」
所長がコントローラーを操作すると、パンツが浮かびながら移動を始めました。
「存外簡単に侵入出来たな」黒の目だし帽を被った二人組の一人が、忍び足のまま呟きました。廊下の奥にある部屋からの明かりが洩れています。
「いいか、もう一度手順を確認するぞ。相手は二人しかいないから、脅して縛り上げ、お宝をゲットしてそのままとんずらだ。いいな、分かったな」
「分かったよ。早いとこ済まそうぜ。そうすりゃ俺たちは大金持ちだ」
二人は目配せをしながら所長室に近づいて行きました。すると、
(うわっ、うわっ、所長・・・)
(何だ?どうした?)
(何かパニック状態になっているようだ・・・何が在った?)
二人組は所長室のドアの前に立ち、聞き耳を立てようとしたその時、二人の目がドアの一部に釘付けになりました。
(何だ?中から何か出てくるぞ・・・)恐怖の予感に襲われました。
それは布の切れ端の様でしたが、まるで何かに引き出されるかの様に次第に大きくなり、全体像が分かる様になりました。そしてそれは、ドアから完全に分離し、二人組の目前に出現したのです。二人の目は大きく見開かれ、口も開けたまま、身動きも出来なくなりました。そうです。二人組は完全に恐怖の虜になったのでした。
その瞬間、この世のものとも思えぬ叫びが研究所内に響き渡っていったのです。
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